■城下町回遊また楽しからずや
「国家の品格」で有名な数学者、藤原正彦さんが文藝春秋の2月号に「私の代表的日本人」として福澤諭吉を詳しく紹介しています。
氏は、昨秋、新幹線から日豊本線で中津駅へ、寺町を抜け山国川を見て中津城から福澤旧居へと80歳の健脚で市内を散策しました。その記事によると、「ある家の壁に『学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり富人となる』という諭吉の言葉が貼ってあった。町全体が諭吉の町らしい」、「後年、諭吉は母お順の底知れぬ愛情を思っては幾度となく涙した。‥‥この小さな町の、この小さな茅葺(かやぶき)の家で育った一人の少年が、長く閉ざされていた日本を世界の大海原へと導く船頭となった」と、福澤が中津や家族愛に育まれたと語っています。
同じく訪問客の話ですが、京都に住む旧友から「夫婦で全国の城巡りをしており、電車で中津駅に降り、今、中津城に来ている」との突然の電話。数ある九州の城巡りに中津を選んだ鑑識眼を褒め讃え、市内回遊と食の魅力も味わってもらいました。
この度、中津を何十回となく訪れ、城下町中津に精通している慶應義塾の山内慶太教授の監修で『まち歩きマップ』が完成しました。中津は空襲の被害がなかったため、今でも福澤が歩いた江戸幕末の城下と同じ道幅や町割りがそのまま残っており、半透明の現代地図を古地図に重ね合わせ、まち歩きを楽しむ工夫をしています。また、スマホでQRコードを読み取ると現在地が表示され、福澤時代を追体験する仕掛け、中津市だからこそできる城下町回遊の新手です。
市は城下町中津の街並みの再生を図り、訪れる観光客の滞在時間を延ばし、加えて市民が地元の歴史を楽しめる取組みを進めます。空き家を利用しカフェや宿泊所を作る支援も行います。豊かで深い中津の歴史の魅力を皆で磨き上げ、多くの人を引き寄せましょう。
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