文字サイズ
自治体の皆さまへ

ふるさとの文化財探訪 第126回

21/33

大分県九重町

『玖珠神楽』

文化財調査委員 音成葉子

なんと豊かな時だろう。
御神木に囲まれた朱塗りの社、氏子らがご神酒やお膳をいただきながら視線は拝殿に向け、玖珠神楽を観ている。
境内は、陽が淡く差して心地よい風が吹き、此の神楽によって木々も人も神さまも一体となったかのような生命の美しさを感じたからであった。
九重町大字引治横尾に伝わる『玖珠神楽』は、大分県指定重要無形文化財である。古典的で優美な舞とされる此の舞は、毎年、引治天満社と牧口八幡社にて見ることができると聞いて、令和6年10月15日におこなわれた牧口八幡社『秋の例大祭』を訪れた。神事の後、玖珠神楽神祇社(社長 香下和男氏)による玖珠神楽の奉納がはじまる。
玖珠神楽神祇社は現在12名の楽人がおり、経験の長い方で70年、短い方で2、3ヶ月である。囃子に使うのは、太鼓、竹笛、しょうご(手振鉦)、トンゴ(小さな銅鑼)と呼ばれ、皆が代わる代わるに囃子も舞もおこなう。今年から楽人に加わった方々もひとりで舞を任されていることに私は驚いた。それも観る側を高揚させるほど力強く勢いがある見事な舞。
別の日に、楽人だけが集まる酒席にお邪魔したが、経験の長い方が手や足、いっときの“間”といった舞の細かい所作を教えている場面に遭遇したことを思い出した。熟練者は「稽古も大事だけどとにかく(拝殿での)場を積まないと」と教え、新しく加入した年齢の若い方々も「〜の舞がしたい!」ととても意欲的である。囃子においてもその熱意は同じだった。新しく加入した方にきっかけを尋ねると「子どもの頃に見た玖珠神楽に憧れて」と。本当に心を打つものはまっすぐ心身にエネルギーを伝えるもの。それゆえに御神木も人もすべてがひとつと感じる『気』がうまれるのではないだろうか。知識などが加わるとその味わいは深くなる。玖珠神楽の起こりについて報告書などで調べてみたくなったときは文化センター内にある九重町歴史資料館へお声掛けください。まずは、来年の玖珠神楽へ。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU