「人前で歌うとき、あたかも神前で祈るときのように、雑念を払ってまっさらな澄み切った心にならなければ完璧な藝(げい)をお見せすることはできない。お客様を神様とみて歌う」。ただ、「お客様は神だから徹底的に大事にして媚びなさい。何をされようが我慢して尽くしなさいと発想、発言したことはまったくない」と、かの有名人は、表題(フレーズ)の真意を説明しています。
日本が誇る「おもてなしの文化」は、外国人にも強烈なインパクトを与えています。相手(顧客)に快適な時間を過ごしてもらうことの喜びを求めるという、自国にはない心遣いの文化に心を動かされ、日本のサービス現場で働くことを強く希望する外国人も少なくないようです。
ところが、この文化を過剰に受け止め、さらには自己の承認欲求を満たすため、暴言や暴行、脅迫、不当な要求に偏ってしまう「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が問題視され続け、沈静化の兆しは見えてきません。「度を超えた」行為は他の顧客への迷惑に止まらず、企業の経営の阻害、またそこで働く労働者の就業環境に不利益をもたらすなど、許すことのできないものとなっています。
カスハラが起こる要因は、「目の前で起こった出来事を迷惑行為に変えてしまう、受け手(顧客)の性質」という個人の内面的な課題とされており、その要因の解消はほぼ不可能と言えます。このため、悪質な行為を繰り返す客の宿泊を断ることが可能となった改正旅館業法の施行(令和5年12月13日)や、ある航空会社は運送規約を定めた約款を見直し、搭乗を拒否できる迷惑行為の明示の検討を始めるなど、各方面でカスハラを抑止する動きが始まっています。
「おもてなしの文化」がこの先も称賛を受けるために、その質を高めるための顧客の声は重要です。ただ、相手の非ばかりを取り上げて、迷惑行為によって自分の心の欲求を満たそうとする、そんな「神様」であってはいけません。
問合せ:人権啓発センター
【電話】22-8017(市役所別館1階)
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