■「平凡」という幸せ
2006(平成18)年、福岡で発生した飲酒運転による凄惨な事故。加害者(犯人)は、3人の幼い命を奪う事故を起こしたにも関わらず、仲間と共に飲酒の証拠隠滅を図るなど、「人の命」を軽んじる行動をとりました。この事件を契機として、飲酒運転に対する罰則が強化されることになりましたが、今もなお各地で飲酒運転による交通事故は後を絶ちません。
この悪しき状況は、飲酒運転や危険運転などが明らかな犯罪行為であること、そしてその犯罪によって被害者とその家族が、身体的被害や財産的被害に止(とど)まらず、様々な被害に苦しめられていることについて、認識と理解が深まっていないことが要因の一つにあるようです。
交通犯罪に限らず、暴行や傷害、性犯罪など、犯罪による被害を受けた人やその家族を苦しめるのは、犯罪そのものやその後遺症だけではありません。興味本位の噂、心ない中傷や偏見による人権侵害、また過熱報道によるプライバシーの侵害などの「二次的被害」に苦しめられる被害者も多く存在します。
このように、立ち直るきっかけさえもつかめず、孤立してしまう被害者の救済措置と適切な支援に対する社会的な関心が高まり、犯罪被害者等の権利や利益の保護を図るため、平成17年に「犯罪被害者等基本法」が施行されました。これによって、犯罪被害者等の人権を守る必要性が大きく取り上げられるようになり、犯罪被害者等が地域で安心して暮らせるよう、当事者の心に寄り添い社会全体で支えていくための施策の推進が図られています。
犯罪によって失われるのは、被害者の命だけではありません。加害者も人生の多くを失い、誰かの支えがなければ生きていけなくなります。
“行ってきます”
いつものように元気に出掛けた家族の“ただいま”を聞くという「平凡」がいかに大切であるかを見つめ直すことが、犯罪と犯罪による被害者の苦しみをなくしていくことになるはずです。
問合せ:人権啓発センター
【電話】22-8017(市役所別館1階)
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