■「する側」と「される側」の心合わせ
「カミングアウト」。
誰にも打ち明けていなかった自分の秘密を自ら誰かに話すことで、その多くは「自分がセクシュアルマイノリティであることを打ち明ける」という意味で使われています。
これに対して「アウティング」は、当事者が公表していない個人情報(例えば、性的指向や性自認など)を当事者の了解を得ることなく、第三者に暴露する行為として使用されています。
この「アウティング」は、口頭によるものに限定されず、インターネット上などで不特定多数の人に情報を流す行為も該当します。仮に、これらの行為が「当事者の気持ちを察した」ものであっても、秘密の暴露は当事者を精神的に追い込んでしまう可能性があります。
2015(平成27)年、ある大学院の学生が同性愛者であることを同級生に暴露され、大学の敷地内で転落死するという事件が起きました。この事件の裁判で、アウティングは「人格権ないしプライバシー権などを著しく侵害するものであり、許されない行為であることは明らか」と言及されたこともあり、アウティングが世間から注目されるようになりました。また昨年には、アウティングによって、精神疾患を発症し、労働基準監督署から労災として認定される事案も発生しています。この事案は職場内における緊急連絡先を登録の際に、同性パートナーの存在を会社側に(一定の条件を付して)伝えたところ、そのことを広く暴露されたものです。アウティングされた当人は、会社に対する信頼が失せ、仲間との関係性も悪化し、退社を余儀なくされることとなってしまいました。
アウティングは「される側」の居場所を奪うばかりか、精神的な苦痛を与え、さらには重大な人権侵害につながってしまうという認識の広がりが求められています。カミングアウトされたときには、「する側」の思いの尊重と「伝えてよい範囲」の確認をし、多様性を認め合う社会の一員になるよう心掛けることが大切です。
問合せ:人権啓発センター
【電話】22-8017(市役所別館1階)
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