■スポーツと人権
スポーツの祭典として、沢山の人が注目するオリンピック。
本来はスポーツを通した人間育成と世界平和を究極の目的として、始まったものであり、人権と密接な関係があります。
紀元前8世紀ごろ、古代ギリシアではまわりの国との戦争が絶えず、エリスという国もオリンピアの支配をめぐり隣国と争い続けていました。エリスの王は悩み抜き、神殿で祈りを捧げたところ「争いの代わりに、競技会をせよ」という神のお告げを受けました。それに伴い、紀元前776年にオリンピア競争を行ったのが、古代オリンピックの始まりだと言われています。古代オリンピックが開催されている間だけは、ギリシア全土にわたり平和協定が結ばれ、国内外すべての争いごとや刑の執行などが止められていたようです。
明治41(1908)年には、「オリンピック憲章」が制定されました。その基本原則には「スポーツをすることは人権の一つである。すべての人はいかなる種類の差別を受けることなく、オリンピック精神に基づき、スポーツをする機会を与えられなければならない」とあり、人権の尊重がうたわれました。
しかし、このようなスローガンを掲げながらも、オリンピックはさまざまな人権問題を抱えてきました。「女性の参加」「性的少数者」「人種差別」「障がい者の参加」などの問題です。昨年のパリオリンピックでフランス政府がイスラム教の女性が髪を隠すスポーツ用スカーフ(ヒシャブ)の着用を自国選手に禁じたことで、人種差別とジェンダー差別が露呈しました。
オリンピックは国際スポーツであり、世界中の人々とともにつくる大会です。令和3(2021)年に開催された東京オリンピック・パラリンピックのテーマのひとつは、一人ひとりが互いを認め合う「多様性と調和」でした。私たち日本人と外国人が、互いの社会や文化に関心を持ち、理解することで、多様性を認め合う社会へとつながります。多様性を尊重し、認め合うことで様々な違いを寛容に受け入れ、あらゆる差別を許さないという人権意識を広く浸透させていくことが必要です。
〔社会教育課、人権啓発・部落差別解消推進課、隣保館〕
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