■「『医療MaaS』始動します」
事務次長 都甲 秀幸(とごうひでゆき)
医療MaaS(マース)は、ワゴン車などの車両にさまざまな医療機器を搭載し、地域に出向いて医療サービスを提供する革新的なシステムです。このサービスは、交通手段と医療サービスを統合し、患者様や医療従事者の移動にかかる負担を軽減することを目的としています。全国的にも実施している医療機関は少なく、山香病院では4月から本格稼働を行う予定であり、県内では初の導入となります。
「MaaS」とは、Mobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)の略で、複数の移動手段を一元的に提供するサービスです。医療分野におけるMaaSは、移動手段と医療サービスを組み合わせ、医療施設へのアクセスを円滑にするとともに、特に高齢者や障がい者など移動が困難な方々の利便性を向上させることを目的としています。
1.医療MaaS導入の目的と背景
山香病院では、通院が困難な患者様に対して送迎サービスを提供する「通院支援サービス」を行っており、交通インフラが十分でない地域の方々に多くご利用いただいています。また、コロナ禍においては、医師が病院にいながら自宅で診療ができる「オンライン診療」を導入しています。
今回、これらのサービスを統合し、高度なオンライン医療機器を搭載した車両に、高い技能を持つ診療看護師(NP)が同行し、各地域やご家庭、高齢者施設等に医療サービスを提供します。高齢化社会の進展に伴い、病院へのアクセスがより一層重要になりますが、医療MaaSにより患者様の移動負担が軽減できます。さらに、医師が移動する時間を省くことで、医療提供の効率化が期待できます。
2.医療MaaSに搭載する主な医療機器
医療MaaS車両に搭載される主な機器は以下のとおりです。
・オンライン超聴診器
心音や心電図をオンラインで医師側にリアルタイムで配信します。
・オンラインポータブルエコー
エコー画像をオンラインで医師側にリアルタイム配信します。
・超音波骨密度測定器
高齢者の骨密度を測定し、骨折リスクを早期に発見します。
・超高精細カメラ
最大70倍までズームでき、医師が遠隔で操作可能な高精細カメラを搭載。外来診療と同じように、医師による目視診療が行えます。
・衛星通信システム(スターリンク)
通信環境が整っていない地域でも、スターリンクを活用して高度なオンライン診療が可能になります。
3.その他の活用方法
医療MaaSは、診療だけでなく予防にも大いに役立ちます。例えば、山香病院が実施している健康出前講座に医療MaaS車両を活用し、地域住民の健康チェックを行うことで、病気の早期発見に繋がります。
また、スターリンクを搭載しているため、災害発生時には迅速な医療提供や支援活動を行うことが可能です。
医療と交通が密接に結びつくことで、効率的かつ安全な医療サービスの提供が可能となり、すべての人々がより健康で安心な生活を送る手助けとなることが期待されています。
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