■飲泉文化
この写真は昭和初期のガニ湯である。中央の女性が湯船から手を延ばして竹筒に汲んでいるのは温泉だ。長湯に温泉を飲む習慣が定着していたことが伺える貴重な写真である。
温泉を飲む文化は中世のヨーロッパで飛躍的に発展してきた。入浴よりもむしろ飲泉を中心に栄えた温泉地の方が多いくらいだ。「温泉は大地のミネラルで、飲泉は野菜を食べる以上の健康づくり」という考え方だ。
昭和8年、ドイツで温泉治療学を学んだ九州帝国大学の松尾武幸(まつおたけゆき)博士が長湯を訪れた。
炭酸濃度の高さに驚き、翌年、長湯に温泉研究所まで作った博士が残した歌。
「飲んで効き長湯して利く長湯のお湯は心臓胃腸に血の薬」
浸かることより飲むことを先に表現したのは、ヨーロッパの温泉を熟知した松尾博士ならではの発想だ。長湯の炭酸泉の特徴を見事に捉えた歌である。
平成5年、ドイツと温泉を核にした国際交流を始めて5年目。登場したのは飲むを専門にした温泉施設「飲泉場COLONADA」
その後、天満神社の境内や平成10年オープンの御前湯玄関口にも飲泉所が誕生。
「飲んで効き…」は今も色あせない長湯温泉の名キャッチコピーなのである。
(直入公民館長 林 寿徳)
<この記事についてアンケートにご協力ください。>