■ベニカンゾウ(ワスレグサ科)
阿孫久見
低地(ていち)や丘陵地(きゅうりょうち)のやや湿(しめ)った畦地(あぜち)や土手(どて)、草地(くさち)に生育(せいいく)する高さ70~90センチの多年草(たねんそう)です。基部(きぶ)につく束生(そくせい)の葉(は)は長い広線形(こうせんけい)の剣状(つるぎじょう)で、長さ60センチ、幅(はば)が1・5センチほどです。花茎(かけい)の上部(じょうぶ)には、やや茎(くき)を巻(ま)く苞(ほう)(花の下部につき、つぼみのとき花を保護(ほご)する葉の変形(へんけい)したもの)という長さ10センチ内外(ないがい)の小さな葉がつきます。若葉(わかば)とつぼみは食(た)べられます。
夏の頃(ころ)、花茎の先に2~3個(こ)の深(ふか)く6裂(れつ)する径(けい)6センチほどの漏斗状(ろうとじょう)(じょうご形(がた))の橙赤色(とうせきしょく)の一重(ひとえ)の花を咲(さ)かせます。花弁(かべん)の中央(ちゅうおう)には黄色(きいろ)い1本の線(せん)があり、花弁は後(うし)ろに反(そ)り返(かえ)ります。
和名の由来(ゆらい)は花が紅色(べにいろ)なので紅萱草(ベニカンゾウ)の名があります。別名を野萱草(ノカンゾウ)ともいいます。
竹田では普通(ふつう)、田(た)の畔(あぜ)で花弁が八重(やえ)になったヤブカンゾウはよく観察(かんさつ)されますが、このベニカンゾウは産地極限(さんちきょくげん)の植物で、掲載(けいさい)の写真(しゃしん)は倉木山(くらきやま)から北東(ほくとう)に派生(はせい)する尾根筋(おねすじ)になった烏嶽(からすだけ)(標高(ひょうこう)684メートル)の岩(いわ)の割(わ)れ目(め)に自生(じせい)した個体(こたい)を撮影(さつえい)したものです。大分県の絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)。花期(かき)は7月から8月です。
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