■シコクスミレ(スミレ科)
阿孫 久見
低山地から山地の落葉樹林内に生育する高さ6センチほどの多年草です。このスミレには地上に茎がありません。一いっ定の標高があり、冷涼で適湿な場所を好む植物です。地下茎をのばして、ふえるのでしばしば小群落をつくります。紀伊半島から四国・九州までの太平洋側の山岳地帯に共通して分布する植物群の一つで九州(熊襲)・四国(速水瀬戸)・紀伊半島の各頭字を合わせてソハヤキ要素の植物と呼ばれています。
束生する葉はふちが波をうつ鋸歯があり、心形で長さ5センチ、幅が4センチほどです。葉の表面は明るい緑色で裏面は淡緑色です。
春の頃、花茎をのばしてスミレ特有の形をした純白で径1・5センチほどの5弁化を咲かせます。上弁はうしろに反り返り、横の側弁の基部には毛がある有毛タイプと無毛のタイプとがあります。唇弁には紫のすじが入ります。唇弁の後ろの距(花弁の一部が袋状に突出した部分)は太くて短いです。
和名の由来は最初に四国で発見されたのにちなんで、この名があります。竹田では、祖母山系のブナ林で腐葉土が積もった林床で観察されます。花期は4月から5月です。
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