平成30年2月、市、豊後高田商工会議所、株式会社トヨ・テックの3者で「豊後高田市外国人技能実習制度導入事業連携協定」を結び、行政と経済団体が一体となって支援する事業組合としては全国初となる「豊後高田International Contribution事業協同組合」(通称BIC…ビック)を設立しました。
同組合は、同年7月25日に国から監理団体の許可を取得。外国人技能実習生や特定技能外国人の方などが、安心して実習や働くことができ、楽しく暮らせる仕組み作りを目指して、活動しています。
そんなBICの設立の経過や運営する中での出来事、今後の取り組みなどについて、同組合代表理事の都築貴志さんにお話を伺いました。
■豊後高田International Contribution事業協同組合代表理事 都築貴志さん
組合の名前は「豊後高田International Contribution(インターナショナルコントリビューション)事業協同組合」です。
名前の中にもある通り、「International Contribution(国際貢献)」というのが、私どもの一番の目的で、その言葉を使おうということで、この名前にさせていただきました。
■BIC設立のきっかけ
当組合は2018年に設立しました。それ以前は若年労働人口の減少にすごく悩まされており、各企業の方たちも事業の継承に悩まれ、市役所や商工会議所の方たちは、毎日のように「どうしたらいいんだ、人がいないんだ」と相談を受けていたと聞いておりました。
私も同じ悩みを抱えていた中、市役所の方から「事業組合を作って、外国人実習生を受け入れてみてはどうか」と相談を受けました。
私どものような会社が、まちのためにできるのであろうかという苦悩を、佐々木市長、野田会頭に相談させていただきました。悩んだ末に、やはり「町のために何かやった」という実績を残したいと決断し、是非やらせてくださいとお願いいたしました。
そして、連携協定を結んでやりましょうと3者(市、商工会議所、トヨ・テック)で話をした思い出があります。
■設立申請で驚かれ、設立後も苦労した
組合の設立には、外国人技能実習機構の許可が必要でしたが、どう申請したらいいか、誰に相談すればいいかもわからない状況の中で、市役所の方を中心に書類を作って申請したのですが、なかなか許可が下りないんです。おかしいなあと思って電話で聞いてみると、組織の中に市役所の方や商工会議所の方が入っていること、本当に事務所があるのかなど、怪しまれていたようでした。
しかし、後日、機構から監査が来て、事務所を確認し、同席した市役所や商工会議所の方を紹介すると、「本当に連携協定を結んで、やってらっしゃるんですね、こんな組織は聞いたことがない」とビックリされていました。
実際、商工会議所だけやJAだけの団体はありますが、市役所の方や商工会議所の方が組織に含まれる、そんな連携協定を結んだ組合の申請は初めてだったそうで、これは素晴らしいと絶賛して帰っていかれ、監査後はあっという間に許可が取れました。
それから組合設立後も大変でした。たとえば、外国人との面接のための書類作成などの段取り、そして、組合員の企業の方を外国に連れて行って、面接、試験などをしましたが、誰もやったことがないので段取りが分からず、ぐちゃぐちゃでした。
最初に連れて行った組合員の企業の方には、本当に申し訳なかったですね。
ただ、何度か繰り返して失敗を重ねていく中で、6年くらい経って、ようやく軌道に乗ってきたと最近になって思うようになりました。本当に立ち上げの苦労は今でも忘れられません。
■やりがいと使命
やはり、外国人が来てくれてから、社員の皆さんが活気づいたとか、そういった言葉を掛けてもらえるのが一番うれしいです。まだ組合の設立間もない頃、受け入れ前は不安でしょうがないと話していたある企業さんが受け入れ後に「19~22歳くらいの実習生は、(社員からすると)孫とか息子ができたみたいな感じで、実習生が一生懸命がんばるから、俺らがやらなきゃいかんと言って、会社に活気が出た」と話してくれたこともありました。
同時に私たちの使命は、外国人が豊後高田市に根付き、豊後高田市を選んでもらうという環境づくりをするのが仕事。これを忘れちゃいけないと思っています。
■外国人と地域の交流
組合設立当初は、このまちに私たちが組合を設立すること自体、いい声を聞かなかったです。そんな中で、どうすればいいのかと考えて、地域の方たちを事務所に招いてクリスマスパーティーやミャンマー・ベトナム料理を一緒に作る料理教室を開催し、喜んでもらったことがありました。
そうしたら、実習生の子たちが近所の方から大量のネギをもらったり、ぜひ着てほしいと日本の着物を貸してもらったり、地区の盆踊りにぜひ参加してほしいという話がたくさん来たり、がんばってるねと声をかけてくれたりするらしいんです。それを聞いて、やってて良かったと思っています。
また、今年の五月祭では、豊後高田少年少女合唱団のみなさんと外国人、日本人の従業員、合わせて100人で大合唱させていただき、本当に圧巻でした。
■今後の課題と目標
やはり、まだいろいろな課題があります。
まずは、ごみの問題をどうしていくのかということです。何度注意しても、外国人たちにごみ出しのルールを理解してもらうのはなかなか難しく、厳しいご指摘をいただきます。
2つ目は、自転車の交通ルールです。今後、豊後高田警察署の方と連携して、外国人にわかりやすい交通ルールの教育をしていこうと考えています。
そして、長期的な問題でいえば、外国人に関わる法律の変更で、外国人の方が豊後高田市にとどまってもらえなくなるかもしれないということです。そのために、これまで以上に、組合(市役所、商工会議所、企業)が協力して、選ばれるまち、住み続けたいまちづくりをしていかなければならないと思っています。
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