◆(6)葵紋象眼火縄銃(あおいもんぞうがんひなわじゅう)
歴史にあまり興味がないという方でも、「三葉葵」の紋には見覚えがあるのではないでしょうか。徳川家の家紋である葵紋が象眼(金属の表面を彫り、異なる素材をはめこむ技法)されたこの火縄銃は、徳川将軍家の一族で御三家のひとつ、尾張藩主に献上されたものと伝わっています。
銃身裏面に刻まれた銘文から、享保18(1733)年に堺ゆかりの鉄砲鍛冶芝辻小兵衛清正(しばつじこへえきよまさ)と芝辻茂右衛門清元(もえもんきよもと)が製作したものと分かります。この二人は尾張藩お抱えの鉄砲鍛冶で、記録によると小兵衛清正は堺の鉄砲鍛冶芝辻理右衛門(りえもん)の弟とされています。堺でつくられた鉄砲は装飾に技巧をこらしたものが多く、この火縄銃も、銃身上部の葵紋のほかに、鋲(びょう)や金具は葵の葉や富士山をかたどっており、見所の多い名品です。
本資料は堺市博物館企画展「芝辻理右衛門家文書と堺の鉄炮(てっぽう)鍛冶」(6月9日まで開催)で展示中です。ぜひご観覧ください。
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