障がいのある方の社会生活などについて理解を深めてもらうために、障がいがありながらも自分らしく区内で生活をしている2人の方に暮らしぶりなどを伺いました。
自分らしい人生を過ごすことのできるまちとして、「住んでよかったと思えるまち~人が輝き活気にあふれ、まちに愛着があること~」につながるきっかけになればと思います。
■自分らしく生き、人生は自分で考える
森川直美(もりかわなおみ)さん 脳性小児麻ひによる障がい
○一人暮らしを決めたきっかけ
森川さんが一人暮らしをはじめて約21年、良かったことも傷ついたこともたくさんありました。
旭区の実家で母に介護をしてもらいながら暮らしていた森川さん。30歳を過ぎた頃の森川さんは体格がよく、彼女の介助に身体的限界を感じていた母との関係がうまくいかない時期がありました。そんな母との生活が限界になったとき、体を壊して母が入院。森川さんは、施設でショートステイを利用することになります。
そこでは、体格のよい彼女の介助は女性では困難なため、トイレや入浴を男性介助者が行うことになりました。彼女にとってはとても嫌な経験として心に残っています。悩んだ末、このまま施設に入所せずに一人暮らしをすることを決意します。
母には「一人暮らしは無理」「あなたにはできるわけがない」と、強く反対されましたが、親を見返したいという思いもあり、施設で一人暮らしの練習をし、障がいのある仲間の自立支援を行うピアカウンセラーや、周囲の支援者とともに親を説得し、一人暮らしをスタートさせました。
○新しい自分の人生をスタート
多くの人に手助けしてもらいスタートした森川さんの一人暮らしは、気心の知れた親との生活とは違い、他人であるヘルパーさんとの意思疎通が難しく、思うようにいかないこともありましたが「言葉が通じにくい、理解してもらえないときは、考えて、他の言葉に置き換え伝えるようにしています」と工夫していたことを教えてくれました。また、生活介護施設では、パソコンで資料づくりをはじめるなど、新しいことにも挑戦されています。
○せっかくの人生、自分らしく楽しく生きる
森川さんの趣味はカラオケに行くこと、自分専用のマイクスタンドを持参してとことん歌います。また、南港に行き、何時間も飽きることなく海の景色を眺め、ゆっくりとした時間を過ごすこともあります。
親元を離れたことで親のありがたみを知り、ほどよい距離感を持てたことで親との関係も良好になりました。毎年お正月には実家に帰り、家族団らんを楽しむそうです。
○区民の皆さんへ
一人暮らしを決めるには勇気がいります。不安で眠れない夜もあります。それでも何もできないと思っていた自分が、一人暮らしができているのは、いろんな人に支えられているからこそです。障がいの有無にかかわらず、良くも悪くも自分にとってたくさんの経験ができるのが一人暮らしです。
「一人暮らしはいいよと伝えたい。今、人生を満喫しています!皆さんもそう思える人生を!」と、満面の笑顔で森川さんが伝えてくれました。
■毎年12月3日~9日は障がい者週間です
「障がい者週間」は、障がいの有無にかかわらず、誰もが相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、地域社会での共生や差別の禁止などに関する理解を深めるとともに、障がいのある方の社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進することを目的としています。
■前向きな気持ちで前を向いて歩く 誰かとつながることができる
小宮泰行(こみややすゆき)さん 知的障がい
○一人暮らしのはじまり
小宮さんは、実家から近いところで一人暮らしを19歳からスタート。「ちゃんと一人暮らしできるの?」と、家族は心配していましたが、グループホームで一人暮らしに向けて練習したのち、支援団体の方に相談し、支援してもらい実現することができました。
家族と暮らしていたときは、何かあれば家族に相談できたことでも、一人暮らしになると自分で考えなければいけません。「一人暮らしでは、自分なりに考えることがとても多くなり、自分の責任が大きくなったことを痛感しました」と、小宮さんは当時を思い出しながら語ります。
○生活と仕事とのバランス
小宮さんは、いくつかの職業を経て、現在は運送会社で働いており、荷物の運搬作業と、トラックの助手席に乗車しドライバーの補佐などを行っています。まだ入社して約1年半。「障がいがあるから仕事ができないと思われたくない。まだまだ仕事を覚えるのに苦労していますが、周りの方にサポートしてもらいながら自分なりにステップアップしていきたい」と語る小宮さんが常に心がけていることは、「先輩に教えられたことは必ずメモを取り、それを見返して次の工程まで何をすべきかを把握し、自分で考え行動できるように意識すること」。相手の言葉の意図がうまく汲みとれないと、不安になって教えられたことと真逆のことをしてしまうことがあり、落ち込むときもありますが、できたときの喜びは大きいと、仕事のやりがいを教えてくれました。
現在の課題は、生活の時間管理やきびきびした動作を心がけることです。「グループホームでは規則正しい生活をしていたので、今でもバランスがとれた生活ができるように心がけなくてはと思っています」と、前向きな小宮さんです。
○人とのコミュニケーションの大切さを実感
休日にはソフトボールのチームに参加し、趣味は野球観戦で、阪神タイガースの大ファンだという小宮さん。平日にはジムにも通っています。仕事だけではなく、趣味を通していろいろな人と少しずつコミュニケーションをとり、人との輪をつなげていきたいと考えています。ソフトボールでは、チームワークで仲間とつながり、野球観戦では、同じ阪神タイガースファンということからSNSで仲間の輪が広がり、一緒に観戦した友人が出演する音楽フェスに参加した経験もあります。「知らない人と話すことに不安を感じたり、コミュニケーションが苦手でうまく伝えられないときもありますが、自分の言葉で伝えることの大切さを感じています」と、小宮さんは実感しているそうです。
○区民の皆さんへ
現在は、母を支えながら二人で暮らす小宮さん。自分自身が不安になることも多い毎日ですが、後ろ向きな気持ちになると不安な気持ちが増幅します。「皆さんに何かあったときは、ぜひ前を向いて歩いてほしい。前向きな気持ちでいてほしい。そうすれば、必ず誰かが助けてくれます」と、話してくれました。
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