昨今では、大人も子どもも多くの人がスマホを持っています。子どもたちが容易にインターネットを利用できるこの時代、オンライン上のトラブルも年々増加傾向にあります。
そんな中、”いじめ”の様子も時代とともに変わってきました。子どもたちの生きている時代に、何が起きているのでしょうか。子どもたちのおかれている状況を知ることで、大人に何ができるのか。どうすれば子どもたちの心が救えるのか。教育学博士の竹内和雄先生にお聞きしました。
竹内(たけうち) 和雄(かずお) 先生
兵庫県立大学環境人間学部教授(教育学博士)
生徒指導を専門とし,いじめ、不登校、ネット問題、生徒会活動等を研究。文部科学省有識者会議座長など、子どもとネット問題についての委員を歴任。
◆問1 平成18年から令和2年にかけて、ネットいじめが一番増えたのは? (1)小学生 (2)中学生 (3)高校生
文部科学省が毎年行っている、通称「問題行動調査※1」の「いじめの態様」のうち、「ネット等での悪口等が原因」の、平成18年から令和2年の15年間のいじめの件数の比較です。
高校生1.5倍、中学生3.2倍、小学生15.9倍です。正解は(1)の小学生です。平成18年の466件から令和2年には7,407件に急増しています。
平成18年の頃は、ネットを利用している小学生がそもそも少なく、最近は小学生のネット利用が当たり前になってきたことが大きな要因でしょう。
※1 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査
◇ネット利用の低年齢化
私が関わるこども家庭庁の「ネットに関わる調査※2」では、ネット利用率が過半数を越えるのは2歳ということがわかっています。もはや小学生のネット利用を云々するまでもなく、乳幼児から始まっているのです。さらに、令和元年から国を挙げたGIGAスクール構想が始まり、小学1年生から学校で情報端末を使うようになりました。
そういう時代に私たちは生きています。大人でもそういう時代の流れにあっぷあっぷの人も珍しくありませんが、子どもたちはのんびりしていられません。ネット利用が当たり前になった時代を生き抜いていかなければなりません。
私の在籍する大学で、保護者にネット利用を厳しく制限されている学生がいました。就職活動においてもネットが活用される現代において、ネット利用を制限されているわけですから、その学生は就職活動でにっちもさっちもいかなくなりました。結果として、保護者がネット利用を解禁したのですが、周りの学生に比べて明らかに不利な状況でした。
一方で、別の学生は、就職活動で履歴書の代わりに自己紹介を動画で求められました。その学生は、たまたま普段からTikTokで動画投稿を繰り返していたので苦手意識もなかったのでしょう。「楽勝でした!」とあっけらかんとし、さらに「お母さんも私のTikTokをやっと認めてくれました」と言っていたのがとても印象的でした。
※2 青少年のインターネット利用環境実態調査
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