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ひと物語 vol.82

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大阪府寝屋川市

■素朴な音色に惹かれて〝風と土の音〟を追い求め
オカリナ制作者 和唐直樹(わとうなおき)さん(50歳・楠根南町)

スペインで手にしたオカリナが人生を変えました。土笛の音色に魅せられ、自宅に工房を開いて28年。和唐直樹さんは「吹き込んだ息がそのまま音になり、吹く人の心がよく伝わります」とその魅力を話します。

◇スペインで出会った土笛
18歳の頃にフラメンコギターを習い始め、フラメンコ発祥の地、スペイン南部のアンダルシアを訪れたのは平成7年の夏。オカリナを首にいっぱいぶら下げた露店のおじさんから日本円で約500円の丸くて小さな土笛を買いました。
本場のギターを買うのが本来の目的でしたが、旅行中も土笛が気になり、取り出して吹いたりながめたり。素朴な音色がすっかり気に入り、「自分で作ってフリマ(フリーマーケット)で売ろう」と思いつきました。
帰国すると図書館で本を借りて作り方を勉強。2週間後にはスペインで買ったような丸い土笛を窯代わりの七輪で焼いて出品しましたが、「全然売れませんでした」と笑います。

◇「オカリナ作りを生業に」
しかし「今考えたら無謀だった」という行動に出ます。帰国してわずか1か月後に会社を辞め、「これを生業(なりわい)に」とオカリナ作りに専念。22歳のときでした。
次に手掛けたのは、今でこそよく知られた形のオカリナのミニ版でした。「当時は制作者も少なく、オカリナもまだ珍しい時代。1個数百円でフリマや音楽のイベント会場で驚くほど売れました」。
29歳のときにはカルチャーセンターの講師として作り方を指導。楽器店でも扱われるようになると、「より楽器としての完成度を追い求めました」。

◇土の状態読み音程と音色の再現に苦心
オカリナはいろいろな大きさと種類があり、和唐さんは焼き方が違う2つのタイプでそれぞれ7種類を制作しています。まずオカリナの表面と裏面に分けた石こうの型に粘土を詰めて成形。指で開閉するトーンホールという12個の穴を開けて音が出るように細工をし、2つを合わせて調律。乾燥後に電気窯で焼きます。
陶器は焼くと全体が縮み、音は半音近く高くなるため、毎回同じ音程のものを作ることが一番難しいといいます。さらにピアノやオーケストラが音合わせに使う国際基準の音程を正確に再現する必要があり、「焼き縮みに影響する土の質や水分量などを細かく調整。天候にも左右される土の状況を読みながら完成度を上げることに苦労しました」。

◇「吹く人との一体感も魅力」
作品はある程度まとめて焼き、制作ペースは1日1個程度。柔らかな音色を保つために700度~800度の低温で焼き、いつでも誰でも気持ちよく吹けて、きれいな音色のオカリナを作ることが信用や信頼につながると信じています。
「オカリナは〝風と土の音〟を感じさせるシンプルな楽器。まるで体の一部のような吹く人との一体感があり、その魅力を伝えていきたい」と話します。

▽オカリナとは
土で形を作って焼いた陶製の土笛。丸形や動物の形もありますが、イタリア語で『小さなガチョウ』という意味があり、サツマイモやピストルのような形が一般的。19世紀後半に楽器として改良され、演奏で広く使われるようになりました。

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