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ひと物語 vol.85

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大阪府寝屋川市

■警察官の経験をテーマに公募エッセーで最高賞
本田 美徳(ほんだ よしのり)さん(61歳・石津南町)

警察官時代の経験を題材にしたエッセーが2つのコンテストで最優秀に輝きました。いずれも退職して初めて応募し、いきなりの最高賞。新聞少年の思い出を綴った受賞作は3223編から選ばれたと知り、「腰が抜けそうになるほど驚きました」と笑います。

◇新聞少年との思い出
日本新聞協会が募集したエッセーコンテストの大学生・社会人部門で受賞した『あの日の青年』は、巡査として交番に勤務していた26歳のときの経験がテーマ。毎日、必ず午前2時頃に朝刊を届けてくれる青年に「なぜそんなに早く配達してくれるの」と尋ねると、「事件を扱う仕事だから、真っ先に読んでもらわないといけないから」と言われました。
さらに警察官と新聞配達員について「新聞の社会面に載る出来事の守り手と、街の人々にその出来事を知らせる重要な役目」と紹介し、青年の姿が大学生のときに新聞を配達していた自身と重なったといいます。

◇きっかけは震災支援報
昭和60年に警察官になりました。平成23年3月に東日本大震災が発生し、その1か月後に被災地の宮城県気仙沼市に派遣されました。
任務は遺族支援でした。「余震が続く中、若い警察官たちと夢中で活動した40日間」を警察関係の部内誌で紹介しました。感情を交えず、事実を淡々と報告する内容でしたが、仲間の間で評判に。これがきっかけで文章を書くことに目覚め、同人誌に寄稿するようになりました。

◇伊賀上野城と大泥棒
主に捜査畑を歩みました。伊賀上野城(三重県伊賀市)を管理する伊賀文化産業協会の公募で最優秀作に選ばれた『城の木漏(こも)れ陽(び)』は、駆け出し刑事の頃の経験を題材にしました。
裏付け捜査で〝大泥棒〞の容疑者と車で三重県内を訪れた帰り道。「伊賀上野城に連れて行ってもらった」と容疑者が幼い頃に死別した両親との思い出を打ち明けると、同乗していた上司に「俺が見たいんや」とお城に向かうよう指示されました。
「えっ?」と驚きましたが、そこは阿吽(あうん)の呼吸だったといいます。「遠くから眺めるだけ」と車を走らせ天守閣が見えると、容疑者は涙を流し、上司の姿に「罪は憎むが人は憎まない」という刑事の鉄則を学んだと振り返ります。

◇「心に残るエッセーを」
題材になりそうなことやアイデアはノートに書き留めています。「エッセーは事実に沿って書くのが原則。事件の〝現場百回〞ではありませんが、内容が正しいかどうかを必ず確認しています」。伊賀上野城も約30年ぶりに訪問。車窓から遠くに見た当時の記憶を確かめ、「白い三層の天守閣。周りには木々から零(こぼ)れる木漏れ陽が輝き、城のシルエットと映えていた」と綴りました。
昨年3月に38年間の警察官生活を終え、現在は松島病院に勤める傍らの執筆活動。初めて実名で投稿した受賞作を新聞記事などで知った友人から多くのお祝いメールが届いたといい、「今後も心に残るエッセーを書いていきたい」と話しています。

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