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ひと物語 vol.91

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大阪府寝屋川市

■過酷なサハラマラソン完走
「この経験を伝えたい」
会社員 柾木 謙吾(まさき けんご)さん(38歳・萱島東)

衣食住すべての荷物を背負い、北アフリカの砂漠を7日間かけて走破するサハラマラソン。運動経験がないサラリーマンの柾木謙吾さんが今年4月、世界で最も過酷と言われる約250kmのレースに挑み、見事完走しました。

◇「チャンスがやって来た」
「会社がサポートするからサハラマラソンに出てみないか」。勤務するIT企業は社員の健康増進を支援していて、2年前、社長にかけられたこの一言が挑戦の始まりでした。
アドベンチャーマラソンでは草分け的な大会。費用も約100万円かかり、「冗談かと思いましたが、新たな自分を見つけるチャンスが向こうからやって来たと感じました」。

◇10kgの荷物を背負って練習
ただ本格的な運動経験はゼロ。5分も走れば息切れする状態からのスタートでした。トレーニングを始めて1か月後に臨んだ80kmのウルトラマラソンはあえなくリタイヤ。「気合いだけではダメだと分かりました」。
週末には朝から日が暮れるまで練習。砂漠に近い環境を体験するため、重さ10kgの荷物を持って鳥取砂丘を走りました。夜通し走る区間がある本番に備え、深夜にスタートする大会にも何度か参加しました。

◇立ったまま気を失いそうに
4月14日、6ステージで争うモロッコ南部の出発地点に立つと、1年半の厳しい練習を乗り越えた喜びに震えました。しかし左足のアキレスけんを練習で痛め、体調は万全でありませんでした。水を含めた荷物は11.5kgと軽量化できず、体力を消耗。第2ステージでは灼熱(しゃくねつ)の砂漠で立ったまま気を失いそうになりました。
この窮地を越えられたのは、「体力を温存することに気を囚われず、常に120%の力を出し切る気持ちで走ることだ」と、この大会にも参加した日本人ランナーからの言葉を思い出したのがきっかけでした。「全力で前に進むしかないと決めると気持ちが吹っ切れました」。最長区間の85.3kmを徹夜で競う第3ステージを走り抜き、「精神が肉体を凌駕(りょうが)したという感覚で立て直すことができました」。

◇強敵の靴ずれ克服
砂漠のレースで一番の強敵は靴ずれです。靴底にたまった砂がこすれて足の裏に水膨れができ、激痛で棄権する選手もいる中で「私は大丈夫でした」と柾木さん。実はフォーム改善のため〝世界最強の走る民族〞と呼ばれるメキシコの先住民が履くワラジに似たサンダルで練習し「足の裏が強くなったかもしれません」と笑います。
砂嵐には閉口しました。吹きさらしのテントで寝ていると、5分に1回の頻度で襲来。「寝返りもできないほどテントの中に砂が積もり、寝不足になりました」。

◇「この経験を伝えていきたい」
レース後半は荷物を減らして力走し、職場の仲間や友人たちの寄せ書きでいっぱいの日の丸を掲げて歓喜のゴール。目標を大きく上回り、842人中141位で完走しました。
壮大な挑戦を終え、「本当に大切なのは完走したことよりも本番に向けて懸命に努力し、練習した過程だと気付きました。今後はこの経験を誰かに伝えていきたい」と話しています。

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