■〝木の駅〟に間伐材集め森と地域を守る
NPO法人 夕立山森林塾代表
佐藤 大輔(さとう だいすけ)さん(49歳)
森の成長のために伐採し間引きされる間伐材。かつて、その多くが利用されないまま山に放置されている光景に心が痛みました。「木は生き物。うまく活用したい」。そんな思いから岐阜県恵那市でスタートした「木の駅プロジェクト」の活動は評判となり、全国に広がりました。
15年前に恵那市で起業し、山の管理を請け負う佐藤林業を設立。神社などから巨木の伐採も頼まれますが、メインは人工林の間伐です。ちょうど冬の今が最盛期。午前8時には山に入り、1日に20本〜40本を切り出しています。
◇農的な暮らしに憧れ森林組合で山仕事
環境に興味を持ったのは、バイクに夢中だった高校生の頃。ジャーナリストの立花隆さんの『エコロジー的思考のすすめ』を読んだのがきっかけでした。自然と向き合う農的な暮らしに憧れ、奈良県内の森林組合に就職。23歳で恵那市に移住し、隣の中津川市で山仕事に従事しました。
「人工林は手入れをしないと地表に太陽の光が届かなくなるため、間伐は欠かせない作業。肉体的にきつい仕事ですが、嫌いではありません」。
◇「間伐材を利用したい!」〝小さな林業〞目指し直訴
当時は伐採したまま利用しない〝切り捨て間伐〞が主流でした。搬出に費用が掛かるためでしたが、「大きな木は存在感があり、放置することが辛かった」といいます。
ある日、思いの丈をA4用紙3枚に書いて森林組合の上司にぶつけました。「間伐材を利用したい」「大きな機械は使わず、手作業に近い持続可能な〝小さな林業〞を目指したい」と訴えると「分かった」と理解してくれました。
◇プロジェクト始動 山主自ら木の駅に搬出
平成21年に退職し、34歳で独立すると請われてNPO法人「夕立山森林塾」の代表に就き、木の駅プロジェクトがスタートしました。
森林所有者(山主)が自ら間伐材を軽トラックで運べる大きさに切って集積場の「木の駅」に持ち込むと、パルプのチップ用材として1トン当たり3000円で業者に売却でき、さらに森林塾が補助金などを活用して地域通貨「モリ券」で同額を上乗せするというシステムです。
「高知県で行われていた『土佐の森方式』をモデルに、誰でもできるようにしたのがポイントでした」。その狙いどおり、社会実験に山仕事の経験がない山主など9人と商店14軒が参加し、2週間で約51トンが集まりました。インターネットで紹介すると、全国で普及。木の駅は80か所を超え、「地域を何とかしたいという共通の思いがありました」と振り返ります。
◇山仕事はライフワーク「山に関わり続けたい」
一方で、山仕事は危険と隣り合わせです。森林塾では林業の担い手を育てる講座で、人工林の手入れやチェンソーの扱い方を指導。作業の正しい知識を学んでもらっており、自身の会社の安全管理にも役立っています。
山仕事はライフワークと話し、黙々と木を植え続けて森をよみがえらせたというフランスの短編小説『木を植えた男』がバイブル。「手入れが必要な山がある限り関わり続け、健全な山林の保全に役立てればうれしい」。
◆私とふるさと
幸町で生まれ、市立中央小学校1年生の夏休みに奈良県に引っ越すまで住んでいました。幼稚園の頃から京阪電車を見るのが大好きで、夢は運転士になることでした。
すぐ近くに高専(現大阪公立大学工業高等専門学校)があり、高専祭に遊びに行ったことを薄っすらと覚えています。
寝屋川市は私のルーツ。2年前に一度訪れましたが、また行ってみたいです。
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