■築120年の生家を改装 75歳で民泊オープン
農家民泊オーナー
四方 宗和(しかた むねかず)さん(81歳)
住みなれた寝屋川市から故郷の京都府綾部市に戻り、生まれ育った実家で民泊を開業しました。売りは〝囲炉裏(いろり)のある宿〟。国内はもとより、日本文化にふれたいという海外の観光客にも人気です。
◇古民家改装し 仲間集う〝遊び場〟に
大阪市内の化学メーカーで長年役員を務め、67歳で退職。同じ頃、父親が亡くなりました。空き家になった綾部市内の実家は、戦前まで養蚕を営んでいた築約120年の古民家。広い土間を居間に改装し、念願の大きな囲炉裏を作りました。
〝遊び場〟と呼んでいた実家に友人たちを招待し、「月に1回くらい料理を持ち寄り、囲炉裏を囲んで遊ぶ生活が10年近く続きました」。
◇山仲間に勧められ 囲炉裏を売りに民泊開業
大学時代はワンダーフォーゲル部で活動し、卒業後は京都の山岳会から中国やパキスタンにも遠征。その山仲間から「囲炉裏を売りに民泊をしたらどう?」と勧められました。
ちょうど自宅の空き部屋などに旅行客を泊める〝民泊〟が解禁されたことも後押し。「旅館や民宿より開業時のハードルが低く、挑戦することにしました」。離れを客室にリニューアル。京都府の補助も受け、令和元年7月、75歳で民泊「蒼鳩庵(そうきゅうあん)」をオープンしました。
◇週1組限定で受け入れ 食事は共同調理で
開業とともにUターン。週に1組限定で受け入れています。食事の提供には飲食店の営業許可が必要なため、宿泊客と一緒に作る共同調理などで対応。「畑で取れた野菜などの食材を用意し、客室に備えられた厨房で自炊してもらうこともあります」。
野菜を収穫する農業体験も行い、開業当初は少なかった利用客も、今では月に20人ほど訪れています。
◇海外の観光客も訪れ「刺激的な毎日です」
欧米や中国からの旅行者も多く、翻訳アプリもフル稼働。茶道師範の妻・真知子さんがふるまう抹茶体験も評判です。
寝屋川市の自宅で12年間、大学の留学生を受け入れた経験も開業を決めた理由の一つで、オープンを知ったハワイ出身の元留学生も両親と宿泊しました。「各地から訪れた人たちと囲炉裏を囲んで話ができるのも民泊の楽しみ。刺激的な毎日を送っています」と笑顔で話します。
◆私とふるさと
31歳のとき、結婚を機に寝屋川市内の新築住宅に居を構えました。大阪市内の会社で45年間勤めましたが、その間、京阪電車に大変お世話になりました。
寝屋川市にはUターンするまで45年間も住んだことになります。市内の自宅で今も妻がお茶を指導しており、お互いに寝屋川と綾部の両市を行き来する生活が続いています。
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