「正しさとポリティカル・コレクトネス」
大阪教育大学 薮田 直子
「正しさ」についてこんな疑問を持ったことはありませんか?マイノリティ集団の正しい呼称はどれ?障害の『害』はひらがなで書く方が正しい?女の子にピンクの服、男の子にはブルーの挿絵はダメ?
全てに応えるマニュアルはありませんが「ポリティカル・コレクトネス(以下PC)」という考え方を紹介します。「政治的妥当性」が直訳になりますが、平等な表現や、公正なあり方を示す言葉です。
そこでおすすめは『ポリティカル・コレクトネスからどこへ』(清水晶子、ハン・トンヒョン、飯野由里子著、2022年、有斐閣)。
これらを学んでおけば「正しく」いられそうですが、バックラッシュ(反動)も大きい。「PCは窮屈だ。」とか、「何も発言できなくなってしまう。」と不安をあおります。しかも「ポリコレ棒」などと揶揄した用法もあって、望ましくない言動をしたらPCを盾に叩かれると。いわゆる「炎上」です。こうなると正しくあることは強いプレッシャーを伴います。
何か問題が起きるとすぐに投稿や配信を削除し無かったことにしようとする事例もありますが、これでは何が問題だったのか分からず、触れてはいけないというタブー視や不安だけがさらにつのってしまいます。
まず知識としてPCを知っておくことは重要です。そして間違ったら、その後どうするかも重要です。多様な社会では、どこでも意見がぶつかり合うし、どんな人も間違えます。重要なのは、避けて通ることではなく、その度に少しずつ調整をしていくことです。
PCは人を非難しダメージを与えるための棒でもないし、また一方で、唯一の正しさを与えてくれる魔法の杖でもありません。でも、多様な相手と向き合うための第一歩にはなります。
「正しくあること」は大切です。でも覚えておいてください、それはプロセスだということを!
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