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人権コラム「しあわせ」

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大阪府河南町

■民主主義と人権
戦後80年の今、民主主義の危機が叫ばれています。内閣府による2023年の世論調査では国の政策に国民の考えが反映されていると思う人は22.5%、思わない人は75.7%。国政選挙の投票率は近年5割前後となっています。あらためて、民主主義とは何かを考える必要があると思います。民主主義とは「簡単に言えば、人民が権力を所有し行使する政治のシステム」『(民主主義って何だろう』東京都教育委員会作成リーフレット)のことです。付け加えるなら「組織の重要な意思決定を、その組織の構成員が行う、即ち構成員が最終決定権(主権)を持つという政体・制度・政治思想」(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)も含むと考えた方が、私たちの日常にひきつけて考えることができるのではないかと思います。

もう少し、民主主義を掘り下げて考えてみましょう。私は大学時代にフランス革命に興味をもち、ルソーの考えに触れることがありました。その中で「民主主義の原則は一般意志にあり、一般意志は人類の共同の利害が目的となっており、人類平等が原則」と学びました。今、ルソーの研究をされている熊本大学の苫野先生も「一般意志とはみんなの意志を持ち寄って見出されたみんなの利益になる合意」と言われています。人類平等については世界人権宣言に「ひとりひとりの人間は生まれながらにしてかけがえのない値打ちと平等で奪うことの出来ない権利をもっています。それを認めることが、自由で公平で平和な世界をつくる基本です」(アムネスティ日本)とあります。民主主義とは人が平等に人権を有していること、そして、最上位の目標である「人類共同の利害」を目指し、心を尽くして話し合えば、人々は合意することができるという前提にたっている考えなのです。しかし、今、気がかりなのは、わかりやすく「敵と味方」を作り出す政治家やリーダーがあふれていることです。

また、多数決が民主主義だという誤解もあります。大学で「日本は民主国家だから多数に従うのはやむを得ない」という学生の意見に出くわしたことがありました。今の日本の政治を見ているとそのように感じてしまうのも致し方ないかも知れません。しかし、先ほども申し上げたように民主主義の原則とは一般意志にあり、一般意志とは人類共同の利害が目的で、人類平等が原則です。そして、議論を通じて「人類共同の利害」の観点にたてば、対話を通じて合意点を見つけることができるという前提に立っています。しかし、説得によって合意を得られる可能性はあっても限られた時間内にそれを可能とすることは必ずしも出来ないことから多数決が出てくるのですが、その場合、逆に少数者の意見が正しく、しかもその考えが多数の承認を得られない場合があります。ここから少数意見の尊重が、意見保留の形で保障されるのです。あらためて、私たち一人一人が学校で、地域で、家庭で実践を通じて民主主義を学び、守り育てていく必要があるのではないでしょうか。

池上英明

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