衣服や繊維製品にまつわる思い出、感動したことなどをテーマとしたエッセイで「繊維のまち・泉大津」を広くPRするために創設した「泉大津市オリアム随筆賞」。第13回の受賞作品が、全国から応募のあった324点の作品から選考されました。
選考は、有栖川有栖氏、玉岡かおる氏、吉村萬壱氏、今年度から新たに室井滋氏が加わり、厳正な審議を経て「オリアム随筆賞(最優秀賞)」を含む上位6作品と、特別賞の「泉大津市長賞」を最終決定しました。入賞全作品は市ホームページに掲載しています。
また、3月22日(土)にテクスピア大阪で受賞者の授賞式および選考委員をパネリストに迎えた「オリアムエッセイ文学フォーラム2025」の開催を予定しています。
※詳細が決まり次第、市ホームページでお知らせします。
■受賞者一覧(敬称略)
※詳しくは本紙をご覧ください。
■選考委員による選評
▽有栖川 有栖氏
今年も候補作の水準が高く、選考にあたっては大いに迷った。
最優秀賞「クラスメイト」は、小学生時代の忘れがたい記憶が鮮やかに作品化している。「男子みんなが好き」と言って転校して行ったサオリちゃんの心情を色々と想像してしまった。
優秀賞二編のうち「手縫いのブックカバー」は、手縫いのブックカバーに再生の意味が二重にこめられているのが巧み。「織りゆく命」は、機織りの音と動きがいきいきと伝わってくるのが心地よかった。
佳作の三作について。「二枚目のハンカチ」は、読む者を素直な気持ちにしてくれるような作品。「織り姫様の唄」は、からむし織が家族のドラマに絡んで、このエッセイという織物も生んだように思えた。「背守りの約束」は大変ドラマティックで、その中心にあるのが背守というのも印象的。
泉大津市長賞も読み応えのある作品が候補に並んだ。その中から選ばれた「優れもの」は、迷いのない力強い筆致で書き抜かれている点に惹かれた。
▽玉岡 かおる氏
今年はレベルの高い作品が多く、悩まされた。最優秀賞となった「クラスメイト」は、ハンカチなど使う意識のなかった昭和の小学生男子が彷彿とでき、直接書かれてはいない病弱な女子生徒の姿や思いが浮き立つよう。優秀賞の「手縫いのブックカバー」は、淡々としていながら、亡くなった夫の輪郭が浮かび上がるよう。再生されたブックカバーにご自身の今が重なる。同優秀賞の「織りゆく命」は、家族性低身長症という聞き慣れぬ病名もさることながら、複雑な遺伝子を織りにたとえた視点が効いた。もし福島での特別な状況が背景にあるなら書いてほしかった。佳作「二枚目のハンカチ」はハンカチで他の作品と重なったが、感動的なエピソード。佳作「織り姫様の唄」は、織るという体験を独特の音で綴ったオリジナリティが光った。または佳作「背守りの約束」は、毛布やセーターなど例年多く書かれるアイテムと一味違う背守りが印象的。年に一度の『第九』を効かせればさらにドラマチックだったかも。泉大津市長賞「優れもの」は毛布の町・泉大津のよさを余すことなく書けた、感心すべき作品といえるだろう。
▽吉村 萬壱氏
今回から室井滋さんが加わって男女比が均等になった。
「クラスメイト」は、サオリさんがクラスの男子全員を好きというのは少し出来過ぎかと思ったが、他の選考委員の話を聞く内に、病気もあって大人びていたサオリさんの目に、クラスの男子たちが子供っぽく愛おしく見えたのかも知れないと納得がいった。
「手縫いのブックカバー」は、新型コロナウイルスによる夫の死を、ウェットに流れがちになるところをよく堪えてドライな筆致で描き切った点が、見事だった。
「織りゆく命」は、福島のからむし織の縦糸と横糸を父母の遺伝子に喩えることで家族が自分たちの運命を受容していく姿が印象的で、糸の「物語」が生きる力を生んだのだと思った。
「二枚目のハンカチ」は、誰かのために二枚目のハンカチを持つという利他的発想に、「織り姫様の唄」は機織りの音が唄であることに、「背守りの約束」は背守りの存在そのものに、教えられるものがあった。
「優れもの」は作者の人生と毛布との繋がりに、個人的なものを超えた時の重みを感じた。
難波利三さん、長い間有難うございました。
▽室井 滋氏
今年初めて、選考委員に加わりました。
拝見していて、随筆を書き慣れた方が多いのにまず驚きました。全体の構成がよく練られ、起承転結もしっかりしていて、とても読み易い。少々意味不明ながら感情が溢れ過ぎて爆発!…なんてぇのはまるでなかった。しかし、正直申し上げて、バランスの整ったものが面白いかというと、かならずしもそうでない所が難しいのかもしれません。
さて、本題に参ります。最優秀賞の「クラスメイト」は遠い昔の思い出なのに筆者の心模様のテンションが高く、登場人物のキャラクターも印象的でした。優秀賞「手縫いのブックカバー」は手縫いのブックカバーとの出会いが筆者のその後の心の支えとなる描写にグッときました。そして「織りゆく命」も…。家族間の“事件”から“解決”までの道のりを読みつつ、最後には「良かったね」と呟いたものです。佳作「二枚目のハンカチ」は「一枚目は自分のため、もう一枚は人のため」がステキ。「織り姫様の唄」はファームステイの体験が若々しく生き生きと綴られており、「背守りの約束」は“背守り”にまつわる不思議なお話に引き込まれました。そして泉大津市長賞には「優れもの」がピッタリ!毛布への熱い想いがそのまま泉大津市の大きな誇りに結びつく作品だと思いました。
他にも強く推した作品がいくつもありました。自分の心を原稿用紙に写すことは、素晴らしいと改めて感じた次第であります。
■最優秀賞作品
※詳しくは本紙をご覧ください。
問合せ:地域経済課
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