■アナログな音とおいしいコーヒー 心がおだやかになるひととき
レコードを聴きながら、ていねいに焙煎されたコーヒーを飲む。そこにあるのは、心やすらぐ時間だ。最近、若者を中心に、レコードや自家焙煎コーヒーが人気を博しているという。なんでも手軽に得られてしまう現代、ひと手間かかるアナログ感が新鮮に映るのだろうか。
レコードの音には、現在主流のデジタルサウンドとは違うなにかがあるという人は多い。自家焙煎コーヒーは近年のブーム以降、店もファンも増えているが、さらに「自分で焙煎する」ことにも注目が集まっている。
レコードとコーヒー、両者に通じる良さとは一体なんだろうか。
■レコードの魅力
◆じっくりと向き合えるようなからだになじむ自然な音
クラシック音楽BAR華ノ音 店主 濱野千華さん
その場の音楽を、空気感そのままに刻むようなアナログなレコードの音。その魅力をとりわけ誰にでもここちよく聴けるクラシック音楽でと、レコードが流れる店を開いたのが濱野さんだ。「クラシックはハードルが高いと思うかもしれませんが、聴き始めると、テレビや映画などで知っている曲も多く、気軽に楽しめるということに気づいたんです」。
出合いはわずか3年前。新型コロナの影響で心が塞ぎがちだったころ、ふと入った喫茶店で流れるクラシック音楽にとても癒され救われた。このすばらしい音楽を実在感あるレコードの音質で味わってほしい。そう感じたのが開店のきっかけだった。スピーカーは吟味の末、加工されず生音に近い、やわらかく自然なサウンドが楽しめるものを選んだそう。
「昔からレコードは好きでした。レコードならではの音って、楽器の生演奏によるクラシックだと、いっそう伝わるものがあるように感じます」。おいしいコーヒーと合わさればより豊かな気分になれると、濱野さんは言葉を添えた。
▽クラシック音楽をもっと!
クラシック音楽は作曲家も楽曲も豊富で、曲調も幅広いので、気分に合わせて気軽に聴いてほしいです。好みがわかってくると、同じ曲を聴き比べて好きな演奏家を見つけたりするおもしろさも出てきますよ。
◆濱野さんがアドバイス アナログレコードを楽しむなら
レコードを聴くためには機器とレコードが必要だが、安く揃える方法も。
手軽に試したいなら、サブスクリプションなど定額制で利用できるサービスもある。
▽STEP1 機器を揃える
必要なのは、レコードプレーヤー、針、フォノイコライザー、アンプ、スピーカー。家電量販店やオーディオ専門店などで購入できる。すべてが内臓されているレコードプレーヤーも。
▽STEP2 レコードを買う
レコードショップをはじめ、中古書店などで入手可能だが、インターネットも手軽。クラシックなら、知られた楽曲は大量に出回るものが多いので安く手に入りやすいのだとか。
▽STEP3 針はそっとおく
レコードは傷つけたり汚したりしないように注意して。持つときは指紋がつかないように、針をおろすときは手が滑って落とすようにならないように、ていねいに扱おう。
▽STEP4 手入れはマメに
ジャケットから取り出したときやターンテーブルにのせたときにホコリや汚れに気づいたら、都度拭いて。ノイズの原因になるだけでなく、針の寿命を延ばすことにもつながる。
■Interview 地元高槻の真空管アンプ専門メーカーに聞くアナログサウンドの魅力
▽アナログな音には数値には現れない独特の質感がある
アナログな音を徹底的に追及する国際的な真空管アンプメーカーが高槻にある。エイ・アンド・エム代表の三浦さんは、いつもデジタルで聴いている音楽をレコードで聴いてみるだけでも新しい発見があり、楽しみ方が広がるという。
デジタルとアナログの音の違いは、実は周波数で見てもわからないんです。ただ、アナログの音を好ましく感じる方が多いのも事実です。
レコードは、針が物理的に盤をこすって音を再生しますよね。実体のあるものから出てくる音は、やはりデジタル信号とは違います。インターネットを介して配信されるストリーミングで聴く音と、昔の1950~70年代に出されたLPの音は、実際に聴くと誰もが違うという印象を受けるはずです。アナログのオーディオにせよレコードにせよ、人を惹きつけ、心を揺さぶるものがある。だからこそデジタル全盛のこの時代にも、支持を得るのだと思います。
それにレコードで音楽を聴くには、まずジャケットから取り出し、プレーヤーにセットして、針をおろすという一連の動作が必要。いわば「儀式」のようなひと手間も、アナログの良さなんじゃないでしょうか。
・目指すのは「躍動感やエネルギーまで伝わるような生き生きとしたサウンド」という代表の三浦裕さん
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