■旅と食べることが好きで誕生した第1号店。
―数十万部売り上げたベストセラーをはじめとするデザイン書を数多く手掛け、デザイナーとして活躍する寺本さんですが、高槻に最初のカフェ[6+EUNITED cafe]をオープンさせたきっかけは、どのような思いだったのでしょうか?
▽「デザインやアートは、もちろん大好きだったんですが、同じぐらい食べることも好きで。当時は仕事の取材や情報収集のために海外に行くことが多くて、魅力的なお店やカフェにたくさん出合うんですが、高槻にはあまりないなと。じゃあ自分が行きたいカフェを作りたい!と行動したのがきっかけです」
([ROCCA and FRIENDS]では、紙雑貨やアクセサリーも販売しています。)
ーなるほど、旅すること、食べることが好きだから、店のコンセプトが〝旅先で食べる感動ごはん〟だったんですね。
▽「そうなんです。旅先の感動を共有したいって気持ちがあって。それは次にオープンした[ROCCA and FRIENDS]にも受け継がれて、〝旅する紅茶とベイクショップandカフェ〟がコンセプトになりました。『旅する紅茶』は、旅先をイメージしたオリジナルブレンドティーです」
―「TAKATSUKI」ブレンドもありますよね。その後もクレープ専門店など、高槻に人気店をオープンさせます。寺本さんにとって、高槻という街はどのような存在ですか?
▽「高槻で生まれてまもなく滋賀に引っ越しましたが、おばあちゃんの家がずっと高槻にあったので、正月やお盆、ゴールデンウィークのたびに松が丘に来ていました。自分が生まれた場所ですし、小さい頃から馴染みがありました」
―その後デザイン会社から独立しフリーランスになった頃、結婚を機に高槻で暮らすようになったとのことですが、その頃の高槻はどのような印象でしたか?
▽「私が店を始める前は、『高槻って、何もないんじゃないか』と言われることが多くてすごくイヤだったんですよ。でも[ROCCA and FRIENDS]ができてからはSNSで〝高槻にオシャレなカフェがあるよ〟という感じで紹介されるようになって。『こんなお店があって、高槻に住んでる人がうらやましい』と書かれた時は、涙が出るほどうれしかったですね」
―それは、自分の店だけでなく、街ごと褒められてうれしい、という感覚なんですか?
▽「そうですね。自分としてもお店を作るということは、街に対してすごく責任があると思っていて。昔から『すてきな店が、すてきな街を作る』という信念があったんですけど、それはスタッフたちにもずっと伝えてきました。カフェの仕事は、洗い物や掃除の仕事も多い。でも食器を洗っているんじゃなくて、街を作っているんだという気持ちでやってほしいと思っています」
(「ずっと前から、手土産にできる高槻銘菓を作りたいなと思っているんです」と寺本さん。)
―それはとてもすてきな考え方!
▽「東京の自由が丘や代官山などもオシャレですてきな店がたくさんあるから、すてきな人たちが街を歩く、だからすてきな街になるというのを見てきたので、高槻も絶対そうなる、面白い街にしていきたいという思いがありました」
■店作りもデザインも人に喜ばれることが全て。
―店と街がいい関係になるために、何かデザインが役割を果たすことはありますか?
▽「ROCCAのクレープ専門店では、クレープの種類ごとに包み紙のデザインを全て変えてるんです。カラフルな包み紙を持った人たちが歩き回れば、街もカラフルになるだろうという思いがあります。普通、クレープ屋さんの包み紙は1種類が当たり前なので、オープン当時は日本で初めての試みだったと思いますよ」
―それはワクワクするアイデアですね。「旅する紅茶」もそうですが、パッケージデザインにバリエーションがあるのは楽しい。デザインのチカラは大きいですね。
▽「そうですね。私の場合、『こんなにいいものがあるんだよ』というのを共有したい、伝えたい、知ってほしいという気持ちが強くて。今、さまざまなクライアントの業態開発とブランディングや、本作りをしていますが、私は、自分で足を運び、自ら体験して、その中から『人に喜ばれる仕事を自分が作る』ことが一番だと思っています」
―みんなが喜ぶ店を次々に作っていく中で、高槻も変わってきましたか?
▽「カフェもですし、飲食店はこだわりのある魅力的なお店がすごく増えました。それぞれレベルが高くて、おいしいお店がいっぱいある。イベントやお祭りで一瞬盛り上がるのもいいですが、私は日々が大事とすごく思っていて、毎日お店に立って頑張っている人たちが、高槻の街の魅力を作っていると思います」
■これからの高槻に期待したいこと。
―どんどん魅力的な街になっている高槻ですが、今後もっとやってみたいことなどありますか?
▽「デザインをしていて一つ思うのは、みんなで統一したブランディングができたらいいなと思います。共有できるスローガン(言葉)や街の色、模様があるだけで、市民のみなさんが統一感を持てる。高槻がどこを目指していて、みんなが何を一緒にシェアできるのかが分かるものがあると、市民みんなの意識やこの街で暮らす充実感が、もう一段上がるんじゃないかなと思います」
―みんなでそれができれば、高槻の街がさらに飛躍できそうですね。
▽「新しく高槻城公園芸術文化劇場ができて、関西将棋会館も今年移転してくる。古墳や安満遺跡公園とか、歴史的なものがいっぱいあるので、それをデザインや言葉でうまく一つに合致させられればいいなと思います。新しい公園ができるらしいので、それも注目しています。高槻が大好きって人たちに私も囲まれています。これからも街の変化が楽しみです」
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