[専門家に聞きました]
NPO法人ファザーリング・ジャパン関西
理事 阿川勇太さん
◆夫婦で対話 子育ての価値観を共有しよう
Profile:
3人の子育て中。第1子の子育て経験をきっかけに、同団体に参加。第2子、第3子で育休を取得。大阪総合保育大学児童保育学部講師として、男性の育児参加などに関する研究に携わる
○男性にとっても育休期間は必要
もし育休取得を迷っている男性がいて、パートナーも取ってほしい、ご自身も家族と楽しい人生を送りたいという思いがあるなら、迷わず取得することをお勧めします。
男性の中には、産後、自分が仕事から急いで帰り、子育てをするようにすれば育休は必要ないと考える人もいるかもしれません。しかし、新生児期の子育てと仕事との両立は、容易ではありません。特に第1子の子育ては、夫婦にとって全てが手探りです。職場では高い労働力を求められ、家庭では子育てに不眠不休で向き合うという状況では、男性の心身に非常に大きな負荷がかかります。
パパが育休を取れる制度が整ってきている状況を考えると、思い切って育休を取って、赤ちゃんとの生活が落ち着くまで、子育てに専念する方が、家族はもちろん、男性自身にとっても良いのではないでしょうか。
私自身、第1子は育休を取らなかったことで、仕事との両立や夫婦間のコミュニケーションに苦労しました。私の経験から、育休を取る際のポイントをお伝えします。
○夫婦の意識のズレを解消
1点目のポイントは「目的意識」です。育休期間を充実したものとするためには、当然のことながらパートナーの存在が欠かせません。なんとなく時間だけ過ぎてしまったということにならないように、事前に、育休の目的を夫婦で共有しておくこと。例えば「育休中は、いずれ仕事に復帰したときの土台を夫婦で作るんだ」という共通意識を持って過ごすことが重要です。
2点目は「自己開示」です。夫婦関係では特に「言わなくても分かるでしょ」というのが出てきがちですが、この考えをやめましょう。夫婦でストレスなく生活していくために、小さなことでも自分の考えや相手にしてほしいことを具体的に伝え合うことが大切です。対話を繰り返すことで相互理解が深まり、夫婦の子育ての土台が作られていきます。
○柔軟にサポートできる関係を築こう
男性にとって、育休は夫婦一緒に子育てのスタートを切ることができるチャンスです。お互い柔軟にサポートできる関係を築き、子育ても仕事も、そして自分の人生も楽しみましょう。
[専門家に聞きました]
おうちじかん〔Family Life Management〕
代表 野間和美さん
◆育休を通じて家族のチーム力を築こう
Profile:
「家族一人一人が自立し協働する暮らし」を提唱し、整理収納アドバイザー・時短家事コーディネーターとしての知識や取り組みを掛け合わせた、家族の暮らし方を提案。企業などで、男性向けの育休研修講座も開催
○出産直後が夫婦関係の分岐点に
子を持つ夫婦にとって、夫が出産直後の子育てにどのように関わったかは夫婦関係の重要な分岐点です。女性の愛情曲線を調べた研究では、育児で大変な乳幼児期に「夫と2人で子育てした」と女性が認識しているかどうかで、乳児期以降の女性の夫への愛情に影響を与えることが分かっています。
○命と対峙する経験が互いの信頼感へ
出産直後の子育ては、緊張と不安の連続です。男性が育休を取ることの一番の意義は、放っておくと命を落としてしまう存在と24時間対峙し続けるストレスを夫婦で一緒に経験することにあります。大変な時期を、試行錯誤しながら一緒に過ごすことで、パートナーがいてくれることの安心感や心強さを感じ、家族としてのチーム力が高まっていきます。
この経験が共有できていれば、男性が仕事復帰した後も、男性はパートナーの過ごす1日が想像できますし、女性も子育ての大変さを理解してくれているという前提で話ができ、お互いの信頼感が全く変わってきます。
○妊娠中からできることを始めよう
例えば、一方が家事が苦手なら、妊娠中から少しずつ練習をして、自分でできることを増やしておくのがいいです。家事分担も柔軟になり、お互いの得意不得意を補いながら協力することもやりやすくなります。理想を言えば、夫婦共に同じレベルで家事育児ができると、新生児期だけに限らず、もし夫婦の片方が病気で動けなくなったときでも変わらず生活していくことができて、家族のリスクヘッジになります。
○性別役割にしばられなくていい
時代が変わり「男性が家族を養う」といった従来男性の役割とされてきたものにしばられる必要はなくなりました。夫婦一緒に相談し、お互いが頑張ればいいんです。世間の正解ではなく、夫婦でしか見つけられない最適解を見つけてほしいと思っています。
子育てを夫婦で乗り越えていくと、楽しい夫婦生活だったなと振り返れるときがきっと来ます。シニアの第二の人生も楽しく過ごせる夫婦関係を目指して“家族”という良いチームを作っていきましょう。
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