前立腺は、膀胱の下方に、尿道のまわりを取り囲むようにある男性にしかない臓器で、年齢とともに肥大して排尿状態に影響を及ぼします。前立腺癌とは、その前立腺にできる癌で、2019年には男性における癌のなかで最も患者数が多くなりました(約9万5千人)。
50歳を過ぎたあたりから、年齢とともに罹患率は上昇し、75歳前後がピークとなります。多くの場合は自覚症状がなく、他の癌に比べ一般的悪性度が低いため、比較的ゆっくりと進行し、予後は良いとされております。
癌の早期発見のためには癌検診が有用ですが、前立腺癌は前立腺特異抗原(PSA)という血液検査を測定して評価します。PSAが4ng/ml以上である場合、前立腺癌である可能性があるため、さらなる精査が必要となります。泌尿器科では、直腸診による前立腺の大きさや硬さ、表面の凹凸の有無の評価、腹部超音波検査による前立腺評価、MRIによる画像評価をして、前立腺癌疑いの可能性が高いかを調べます。
前立腺癌がより強く疑われたら、さらなる検査として前立腺針生検を行います。この場合入院となりますが、下半身麻酔下に前立腺から特殊な機械針で組織検体を採取し、顕微鏡検査にて病理組織診断を行い、癌の悪性度や陽性数などを評価します。生検病理検査で前立腺癌が見つかれば、CTや骨シンチグラフィーにて、進行程度や転移の有無を画像的に調べ、ステージ診断をします。
ステージ診断がつきましたら、癌治療の方針を決めます。前立腺癌治療は主に手術、放射線療法、ホルモン治療となります。先に述べたように一般的には予後は良好ですが、治療による合併症などのリスクや、治療後の生活の質(QOL)を考慮し、ご自身にあった治療を行います。侵襲(身体の負担)が少ないロボット支援手術、放射線治療については当院ではできないため、近隣施設への紹介を行っております。ホルモン治療は皮下注射と投薬による薬剤治療で、当院外来通院で行っております。
50歳を過ぎれば、一度前立腺癌検診または泌尿器科受診をお考えください。
泌尿器科 部長 望月裕司
問合せ:国保中央病院
【電話】0744-32-8800
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