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いにしえの風 斑鳩文化財センターだより

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奈良県斑鳩町

■秋季特別展「法隆寺地域の仏教建造物」展示中の法隆寺金堂鴟尾の復元品
今回は、12月17日まで開催中の斑鳩文化財センター秋季特別展世界遺産登録30周年記念「法隆寺地域の仏教建造物」のみどころとして、先月号に引き続き法隆寺金堂の鴟尾(しび)(復元品)について紹介します。
▽7世紀後半期の法隆寺西院伽藍(がらん)の「鴟尾」
「鴟尾」とは、仏教的建物の屋根頂部の「大棟(おおむね)」の両端に取り付けられた特殊な瓦製品で、「昭和大修理」において法隆寺金堂所用の鴟尾として製作された試作品は、高さ約1mにもおよぶ大型品で、当センターの展示会では、初めての展示です。
この復元品は、昭和大修理にともない実施された法隆寺東院の伝法堂(でんぽうどう)(奈良時代)の礎石の基礎部分(根石(ねいし))に転用されていた破片資料や西院伽藍金堂付近等から出土した資料をもとに復元されましたが、その後、本紙掲載の図のように訂正されています。
鴟尾のヒレ部の段は、瓦が重なる状態を表現したものです。鴟尾の文様は、胴部の六花文(ろっかもん)が配置された縦方向の二本からなる凸帯の間に、法隆寺再建時に採用された「法隆寺式」軒平瓦の瓦当(がとう)文様に用いられた「忍冬唐草文(にんどうからくさもん)」を削り出して表現しています。腹部には法隆寺「玉虫厨子(たまむしのずし)」の鴟尾に表現されている羽根状に近い装飾が施された大変装飾性の高い鴟尾となっています。
こうしたことから、天智(てんじ)天皇9(670)年の法隆寺(若草伽藍)罹災(りさい)後ほどなくして再建が始まった法隆寺西院伽藍の金堂に用いられた鴟尾と推定されています。また、こうした装飾性豊かな鴟尾は、葡萄(ぶどう)唐草文を用いた難波宮跡(大阪市)のほか、太平寺廃寺(柏原市)、平安宮跡(京都市)などで出土していますが、非常に珍しいものです。

▽「鴟尾」の復元について
昭和大修理では、調査・研究に基づき、創建(そうけん)当初の姿に復原して修理を行う方針であったことから、金堂所用と推定された鴟尾も、復元案に沿って製作がなされました。しかし、現況の金堂屋根の「大棟」の両端に復元された鴟尾をすえるスペースが取れないことや、出土した破片が少ないなかでの復元案であったことなどから、専門的指導を行う目的で設置された「法隆寺国宝保存協議会」で慎重かつ熱い議論がなされ、昭和大修理では、復元した鴟尾を使用しないこととなり、現在見られるような古式の鬼瓦を暫定(ざんてい)的てきに用いることとなったのでした。
展示会では、法隆寺の金堂や五重塔の古材など貴重な関係資料を展示しています。ぜひ、この機会にご観覧ください。

問合せ:斑鳩文化財センター
【電話】0745-70-1200

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