令和6年4月1日に「改正障害者差別解消法」が施行され、事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務になりました。「事業者」とは、企業や団体、店舗のことであり、目的の営利・非営利、個人・法人を問わず、同じサービスなどを反復継続する意思をもって行う者をいいます。
個人事業主やボランティア活動をするグループも「事業者」に含まれます。
■合理的配慮の提供とは
社会生活において提供されている設備やサービスなどは、障害のない人には簡単に利用できる一方、障害のある人にとっては利用が難しい場合があります。このような、障害のある人にとっての社会的なバリアについて、個々の場面で障害のある人から「社会的なバリアを取り除いてほしい」という意思が示されたとき、その実施に伴う負担が重すぎない範囲で、バリアを取り除くために必要かつ合理的な対応をすることを「合理的配慮の提供」といいます。
例:飲食店で障害のある人から「車椅子のまま着席したい」との申出があった。⇒机に備え付けの椅子を片付けて、車椅子のまま着席できるスペースを確保した。
■合理的配慮の範囲
合理的配慮は事業者等の事務や事業の目的・内容・機能に照らし、実施に伴う負担が重すぎないことのほか、次の三つを満たすものでなくてはなりません。
1.必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること。
2.障害のない人との比較において、同等の機会の提供を受けるためのものであること。
3.事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと。
例:飲食店で障害のある人から食事介助を求める申出があった。⇒その飲食店は食事介助を事業の一環として行っておらず、本来の業務に付随するものではないため、介助を断った。ただし、食べやすくするために箸のみを提供する代わりにスプーンやフォークを一緒に提供し、料理も切り分けて提供した。
■「建設的対話」が重要です
合理的配慮の提供にあたっては、社会的なバリアを取り除くために必要な対応について、事業者と障害のある人との間で対話を重ね、共に解決策を検討する「建設的対話」が重要です。障害のある人からの申出への対応が難しい場合でも、障害のある人・事業者の双方が持っている情報や意見を伝えあい、建設的対話に努めることで、目的に応じてかわりの手段を見つけていくことができます。
例:小売店で混雑時に、視覚障害のある人から店員に対して、「店内を付き添って買い物を補助してほしい」との申出があった。⇒混雑時のため付き添いはできないが、代わりに店員が買い物リストを書き留めて商品を準備する旨を提案した。
※ここで示している各具体例は、あくまでも考え方の一例です。実際には個別に判断する必要があります。
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