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いにしえの風 斑鳩文化財センターだより

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奈良県斑鳩町

■中宮寺跡周辺遺跡から出土した硯(すずり)
平成30年度から令和4年度にかけての5年間、中宮寺跡の北側で行った中宮寺跡周辺遺跡の範囲確認調査の取りまとめを行っています。
今回は、この調査で出土した硯について紹介します。
▽古代の硯
古代の硯は、紙、筆、墨とあわせて「文房四宝(ぶんぼうしほう)」と呼ばれ、中国文人の趣味の一つであり、当時の「お役人」の必要アイテムの一つでもありました。
硯といえば、長方形をイメージする人が多いのではないでしょうか。しかし、古代の硯は、墨を摺(す)る面(硯面(けんめん))が丸い形をした「円面硯」や、「風」の文字のような形をした「風字(ふうじ)硯」、羊や鳥などの動物の形を模した「形象硯」など、さまざまな形をした硯があります。さらに、土器(須恵器(すえき))の蓋(ふた)の内面や大きな甕(かめ)の湾曲した体部を硯として利用したもの(転用硯)もあります。
日本で硯が使用されはじめるのは、7世紀の前半頃と考えられています。古代の硯には、焼き物のほか、石を加工したものもありますが、大半は焼き物で、中でも最も多いのが須恵器です。平安時代後半頃になると、石製の硯が使用され、現代ではプラスチック製のものもあります。

▽町内の遺跡から出土した硯
中宮寺跡周辺遺跡は、史跡中宮寺跡の周囲に広がる遺跡で、これまで、中宮寺跡の北側から西側にかけて行った発掘調査で、古代のものと考えられる柱穴や溝などの遺構が多く見つかっており、須恵器や土師器(はじき)などの土器や瓦などの遺物が多く出土しています。今回紹介する硯は、中宮寺跡の北方の秋葉川(あきばがわ)の南側で行った発掘調査で出土しました。見つかった硯は破片で大半が失われていますが、直径が20cm程度で、長方形の透かし穴のある脚部をもつ「円面硯」です。硯面も一部残っていて、他の部分に比べて滑らかで、墨も付着していることから、実際に使用していたことがわかります。こうした硯は、中宮寺の尼僧または寺の維持管理を行っていた役人などが使用していたものと想像されます。
なお、藤ノ木古墳の西方の「錦ヶ丘」と呼ばれる住宅地がある丘陵にかつてあった竜田御坊山(ごぼうやま)三号墳から、中国大陸からもたらされたと考えられる三さん彩さいの円面硯が出土しています。中国でも類例の少ない貴重なもので、国の重要文化財に指定されています。

今回紹介した中宮寺跡周辺遺跡から出土した硯は、来年度の春季企画展で展示を予定していますので、ご期待ください。

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