■「球春に思う」
毎日のようにプロ野球やメジャーリーグのキャンプ情報を見聞きする機会が増え、開幕が楽しみな季節がやってきた。昨年12月に、本町にも大谷翔平選手からグローブが届いた。そのグローブにより野球に興味を持ち、大きな舞台を目指す子どもたちが出てきてくれたら嬉しい。
私も伊具高校時代は野球部で汗を流した。当時の監督を務めた先生を囲むOB会を毎年行っており、これまで50年続いている。若いときは練習や大会での武勇伝に花が咲いたものだが、今は、孫や体調、薬の量などの話題が多くなり、月日の流れを痛感する。
長い人生の中でのたった3年間の出来事なのだが、泣き笑いの凝縮した、須江監督風に言えばとても密な青春を送ることができた。そんなメンバーと今でも集える機会を持てる私はとても幸せ者だ。
一方で、昨年まで伊具高校の野球グラウンドは、令和元年東日本台風災害の仮設住宅として使用されており、野球部員が少なかったとはいえ、満足に練習できる環境ではなかったことを思うと申し訳ない気持ちになる。しかし、県と学校を挙げて被災者のために場所を提供してくれたこと、また、その支援に多くの町民が救われたという事実は忘れないでほしい。私の齢になりつくづく思うのは、若い方たちには、経験した全てのことを大切にしてほしいということである。野球に限らず、小学生でも中学生でも、その時代に打ち込んだ出来事や時間、仲間、そして災害の経験でさえも、それぞれにとって人生の大きな財産になると思うから。
災害から4年余りが過ぎ、伊具高校のグラウンドから仮設住宅が撤去された。球春を迎える今、この町長室にグラウンドで躍動する声や心地良い球音が届くことを待っている。
丸森町長 保科郷雄
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