東日本大震災を語り継ぐため市民図書館に設けた「3・11震災文庫」。所蔵する約1万冊から、よりすぐりの本をご紹介します。
■震災を風化させず、正しく恐れる
一般社団法人ジモトアーカイブせんだい 理事 木村 浩二
○「3・11キヲクのキロク―市民が撮った3・11大震災記憶の記録」
NPO法人20世紀アーカイブ仙台/企画・編集・制作・刊
震災後の被災地を撮影した写真集で、被災した市民がそれぞれの目線で記録したものです。撮影日時は、震災当日から数カ月後まで、撮影場所も、宮城県内の多くの被災市町にわたっています。何より記録としての価値は、日時、撮影者、場所が全てに表示されている点で、離れた多くの地点で同時的に撮影が可能になったのは、カメラ付き通信媒体の普及で、皮肉にも途切れた通信機能を補完できたからでしょう。「3・11」を写真で残す、と「3・11」を文字で残す、の2部構成。その後の定点記録図書として「3・11キヲクのキロク、そしてイマ。」「3・11キヲクのキロク、そしてイマ。2021」もあります。
○「超巨大地震に迫る―日本列島で何が起きているのか」
大木聖子(さとこ)・纐纈(こうけつ)一起/著
NHK出版 刊
震災前から地震、津波など天災の危険性を訴え、防災教育にも力を注いできた若い研究者が、発生してしまった巨大災害に対して、おそらく忸じく怩じたる思いでまとめた警告書です。第一線で研究に携わりながら、何も為なしえなかった無力感を感じつつも、繰り返されるであろう天災に対して、どう備えなければならないのか、科学者の視点から多くのことを問いかけています。細かなデータの提示も分かりやすく、小・中学生にも向き合ってきた説得力ある語り口は、ドキュメンタリータッチでしっかりと伝わってきます。何度読み返しても胸が熱くなり、薄らいでゆく記憶をいつも2011年3月に呼び戻してくれます。
紹介した本は、市民図書館でご覧いただけます
問合せ:市民図書館
【電話】261・1585
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