東日本大震災を語り継ぐため市民図書館に設けた「3・11震災文庫」。所蔵する約1万冊から、よりすぐりの本をご紹介します。
■忘れたくない、一人一人の豊かな暮らしの記憶
認定NPO法人冒険あそび場― せんだい・みやぎネットワーク 理事 根本 暁生(あきお)
○「ふたつの郷(さと)―言(こと)の葉で紡ぐ六郷・七郷の『新・地域誌』」
NPO法人20世紀アーカイブ仙台/編 六郷・七郷コミネット 刊
若林区沿岸部の六郷・七郷地区のかつての暮らしについて、官民協働で被災地域を支援していこうとできた「六郷・七郷コミネット」が、仮設住宅などを回って思い出話を語ってもらい、まとめたものです。2012~13年、震災の傷跡がまだそのまま残る頃、故郷を奪われた方と「記憶までは失われていない」ことを再確認しながら、次の世代にも「この地にこんな故郷があったんだよ」と伝えようという思いからでした。機械などない時代の農業から、自然とうまく付き合う暮らしの様子まで、「大変だったんだよ」と言いながら笑顔で語る皆さんのストーリーは、引き込まれるものばかりです。
○「六郷東部の原風景―子どもが遊んできた記憶を、未来へ」
認定NPO法人冒険あそび場―せんだい・みやぎネットワーク/編・刊
若林区六郷東部地域で、子ども時代の思い出話を伺って収録した冊子です。用水路で魚を取ったり、冬には凍った田んぼや沼でスケートをしたり、子どもたちは、季節と共にある身近な地域の暮らしの営みを知り、大人とも関わりを持ちながら自由闊達(かったつ)に遊んでいました。昨今、子どもの遊び場をどうつくるか…という議論がされています。失われた遊びの環境を取り戻すのは急務ですが、そんな今だからこそ、施設を整備しなくても遊び育つことのできた地域の在り方から学べるものがたくさんあります。タイトルの「未来へ」は、決して記録して終わりにすべき「過去の話」ではないことを示しています。
紹介した本は、市民図書館でご覧いただけます
問合せ:市民図書館
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