東日本大震災を語り継ぐため市民図書館に設けた「3・11震災文庫」。所蔵する約1万冊から、よりすぐりの本をご紹介します。
■受け取るバトン
国境なき劇団 八巻 寿文(としぶみ)
○「地震日記―能登半島地震発災から五日間の記録」
鹿野(かの)桃香/著・刊
東日本大震災では多くの手記が残され、それらの体験の重さには、かける言葉を失います。
しかし自身に興味を向けて綴つづる「日記」の特性なのか、被災した書き手の横顔が伝わり「そうなんだ」とつぶやく気持ちになります。始めは「自分のためだけ」のメモでしたが「心配してくれている親しい友人」に対し「こんなことが実際に起きていたんだよ」と、聞きづらいことに答えるため手作業で本を作り、今は「この出来事に長く向き合えるように」と著者は語ります。
おそらくこの本には数年後に書いたら薄らぐ「確かさ」があります。今これを受け取ることであの時の体験が心の近景となり収め直せるかもしれません。
○「孤塁(こるい)―双葉(ふたば)郡消防士たちの3・11」
吉田千亜/著
岩波書店刊
いったい何が起きているのか想像力が追い付かず、ただ愕然(がくぜん)とするばかりの報道がいくつもありましたが、そのいくつかをこの本で知ることができました。
福島第一原発が爆発し、半径20キロ圏内に入れない全国から参集した緊急消防援助隊に囲まれ、食料や燃料はおろか情報すら無く不眠不休で救助に当たる双葉郡消防本部125人の複数の現場が時系列に並べて書き刻まれています。
原発から火災通報が入り職員が敬礼する間を出動する際「特攻隊はきっとこうだったのだろうと思った」と語っています。
筆者は「癒えていない傷をこじ開ける取材者」である自責の念に苛まれながら、読者に「バトンを渡す」と綴り終えます。
紹介した本は、市民図書館でご覧いただけます
問合せ:市民図書館
【電話】261・1585
<この記事についてアンケートにご協力ください。>