東日本大震災を語り継ぐため市民図書館に設けた「3・11震災文庫」。所蔵する約1万冊から、よりすぐりの本をご紹介します。
■震災・その後を未来につなぐ本
宮城学院女子大学非常勤講師
平形 ひろみ
○「震災を語り伝える若者たち―みやぎ・きずなFプロジェクト」
瀬成田実(せなりたまこと)/著
かもがわ出版 刊
震災学習でいのちの大切さを学んだ七ヶ浜町立向洋中学校1年生は、2015年に地域の震災復興のために有志チームを立ち上げました。この本は、その軌跡をたどったドキュメンタリーです。チームのメンバーは、中学校卒業後も「きずなFプロジェクト」として在校生らと共に語り部としての活動を続けながら、震災を知らない子どもたちへも伝わるようにと紙芝居や絵本を制作し、上演活動にも取り組みます。
そんな彼らと共に今も活動を続ける著者「セニョ先生」はベテランの社会科教師。学校、友、地域、被災者らとの交流を通して徐々に変化していく10代の心の動きを確かな筆致で描きます。
○「藍色時刻の君たちは」
前川ほまれ/著
東京創元社 刊
海沿いの町に住む高校2年生のヤングケアラー3人を主人公にした小説です。介護と家族の世話で忙しい日々を送る彼らの前に、1人の若い女性が現れます。彼らの気持ちを受け止めて、必要な支援をする青葉さん。彼女も心にブルーを秘めています。
そして2011年3月に地震発生、震災で失われたものとそこから始まる新たな物語。
11年後に東京で再会した3人は、若い頃の青葉さんを偶然知ることになります。登場人物らの家族への思いが全編にあふれ、すぐそばに彼らがいるかのようなリアリティーを感じさせます。作者は宮城県出身の30代の看護師。小説にしては珍しく、巻末に参考文献が付いています。
紹介した本は、市民図書館でご覧いただけます
問合せ:市民図書館
【電話】261・1585
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