東日本大震災を語り継ぐため市民図書館に設けた「3・11震災文庫」。所蔵する約1万冊から、よりすぐりの本をご紹介します。
■一瞬を固定して未来へつなげる
写真家 佐々木 隆二
○「東日本大震災2011・3・11―『あの日』のこと」
高橋邦典/写真・文
ポプラ社 刊
朝「行ってきます」って家を出たのに「ただいま」って帰るはずの家が流されてなくなっていました。朝「おはよう」ってあいさつを交わしたのに「おやすみ」を言うはずの妻が流されて亡くなってしまいました。
この写真集は、災害を受けた場所で被災者が真っすぐ前を見つめている写真と、その人たちが語った言葉で綴(つづ)られています。
モノクロ写真の粒子の一粒一粒に命の時間や家族で暮らした愛(いと)おしい時間が深く刻まれています。「財産は流されてなくなったけど、生きる力だけは残っています」という人のたくましさ。そして、「ごく普通の何げない生活が一番幸せでした」ということに気付かせてくれます。
○「あの時―俳句が生まれる瞬間」
高野ムツオ/著
佐々木隆二/写真
朔出版 刊
俳句も写真も一瞬を切り取って固定します。まだ誰も見ていなかったモノを視覚化するという共通点があります。
「冬波の五体投地のきりもなし」。高野さんの句に、私は荒浜で撮った僧侶たちの祈りの写真を組み合わせました。図らずも高野さんと連動するように撮っていたことになります。
俳句は、見えない時間や森羅万象や心の中まで詠むことができます。一方、写真は見えるモノ限定なので、夢や闇夜は写りません。この本は、俳句と写真をコラボした一冊です。俳句に添い、反すうしながら歩いて撮った写真もブレンドしてあります。写真が俳句を想像する力の助けになればと願っています。
紹介した本は、市民図書館でご覧いただけます
問合せ:市民図書館
【電話】261・1585
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