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町長コラム ベア・パル

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宮城県利府町

■科学の子

世界で日本のサブカルチャーが熱を帯びています。その起点は手塚治虫先生。手塚マンガの代表作である鉄腕アトムは戦後、原爆被害にあった日本が科学の力をポジティブに利用しようと「アトムズフォーピース(原子力の平和利用)」を打ち出した際、歩調を合わせるように連載が始まります。科学に対する期待は、キャラクターがウラン、コバルト、プルート、リン、エタノール等の元素で命名されていることからも明らかであり、21世紀はウラン原子「分裂」がパワーの源であると「心優しい科学の子」アトムは身をもって体現しました。社会やビジネスも地方から都会へ、大家族から核家族へ、テレビや電話が一家に一台から家族一人一台へ、個別化、分化することによって土台が築かれていきます。
しかし、70年代以降、明るい機械文明の行き先は一変します。その代表作は「銀河鉄道999」でしょう。同作は親子の葛藤や社会格差を描き、期待された機械・科学、人間の知性や理知が支配する理想郷たる文明がディストピア(暗黒世界)として描かれます。『風の谷のナウシカ』や『機動戦士ガンダム』、『地球へ(テラへ)』など、同じテーマです。未来に対する失望は「戦争を知らない子供たち」の始めた学生運動が所期の目的を果たせなかった流れと一致していると私はみています。
今は、VUCA※の時代背景を表してか、得体のしれない、巨大なモンスターと戦う漫画が人気を集めています。『チェンソーマン』『怪獣8号』『進撃の巨人』等ですが、共通しているのは、その巨人的な「パワーと融合」することによって凄まじい力を獲得し、敵と対峙することです。
前の世代がバラバラにしたものや分裂していったものを融合させていくこと、あるいは結合させていくことがこれからの時代に求められる姿勢かもしれません。そういえば急逝された鳥山明先生の作品は共通して全ての違いを「融合」させた、ロボットや人間、宇宙人やら地球人、恐竜や世界の国境、空間、人種等、あらゆる相違を超えて「フュージョン」させた物語だったのではないでしょうか。とてつもないエネルギーを「融合」させること、これは新しい時代の趨勢(すうせい)になるかもしれません。心して臨みたいと思います。

※VUCA…Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字をとった言葉で、目まぐるしく変転する予測困難な状況のこと。

利府町長 熊谷 大(ゆたか)

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