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町長コラム ベア・パル

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宮城県利府町

「優しい映画」

去年の酷暑の折、浜田・須賀地区で映画の撮影が行われました。町が推し進めるシティセールスの一環で、「せんだい・宮城フィルムコミッション」に登録していましたがその成果が叶って、利府町が映画の舞台になったのです。
映画のタイトルは「ぼくが生きてる、ふたつの世界」。塩竈市出身の「コーダ」※エッセイスト五十嵐大(いがらしだい)さんの半生を描いた本が原作で、新進気鋭の女性監督、呉美保(おみぽ)氏が映像化しました。主演は、なんと!今最も人気のある俳優、吉沢亮(よしざわりょう)さん。
私も試写会を見ましたが、宮城県の小さな港町で繰り広げられる人間模様が、繊細に、かつゆっくりと描かれていました。押し寄せる波のように揺れる人々の気持ちや親子の関係、気の荒い家族を支える忍耐や気ぜわしさなどが淡々と表現され、ストーリー上、大変重要となる親子の融和や家族の喧嘩のシーンなどは浜田地区の踏切や空き家が使用され、ロケのほとんどは利府で行われました。
吉沢さんが、浜田・須賀を舞台に台詞を発している姿が、利府町民としてとても新鮮で嬉しい気持ちになりました。彼の憂いの表情がアップで写っているフライヤーの裏には、須賀漁港を歩く吉沢さんが。石田大橋のシーンは、呉監督が、ロケ前に利府町内をくまなく走った際、(おそらくしおりトンネルを抜けて、須賀漁港へ入る所)漁港の入り口を見て「ここ、ここ!」と叫び、映画のイメージを決定づけた場所だったことを映画の上映推進委員会の立ち上げのトークショーで話していました。芸術家の琴線に触れるロケーションを提供する須賀の魅力に脱帽する思いです。
9月から順次全国の映画館でロードショーされます。撮影場所となった利府町内のロケ地は「聖地巡礼」よろしく、多くのファンのみなさんが訪れる場所になるでしょう。
今年の夏も暑くなるかもしれません。しかし、私にとっては、利府町の漁港で、監督や出演者、スタッフ、撮影隊が大汗をかきながら、素晴らしく優しい映画作品を作り上げた季節で、一服の涼を差し入れするために利府の冷えた特産品をたくさん積んで職員とお邪魔した、セミの音と潮のかおりと吉沢亮さんに手渡せなかった手作りの蜂蜜の思い出がよみがえる夏となりそうです。

※コーダ(CODA)…Children of Deaf Adultsの略称で、耳が聞こえない、または聞こえにくい親のもとで育つ子どものこと。「ろう文化」と「聴文化」のギャップから、コミュニケーション方法や他者とのつながりの少なさ、親との関係性などで悩むことが多い。

利府町長 熊谷 大(ゆたか)

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