「少年は海から帰って大人になる」
最近、世界の時局がますます厳しくなり、日々、明るい希望を探してチャレンジをしている自分がいることに気が付きます。利府は町自体が野心的な目標を立て、一歩一歩着実に前に進んでいますが、時に心がおられることもあります。しかし、人口減少社会に対して、利府町という小さな町がどのように挑んでいるかという姿は多くの人々に共感を示せているのではないかと思います。
先日、浅川町議から一冊の本を手渡されました。片岡佳哉(かたおかよしや)著『ブルーウォーター・ストーリーたった一人、ヨットで南極に挑んだ日本人』(舵社)です。
片岡氏は1981年8月4日に陸前浜田港から世界一周の夢と共に出航。約8年かけて、単独航行にて目標を達成しました。いまだに冒険を共にした全長7m強の小型ヨット「青海(あおみ)」が浜田漁港に停泊してあります。
片岡氏は東北大学卒業後一旦、就職しましたが、辞して夢の実現のため大海原へ。ビル程の高低差のある激しい波に体を預け、時に転覆し、マストが折れ、座礁や嵐に遭遇し、氷海航行の厳しさを経験しました。それらの写真エッセイ、冒険野郎には欠かせないワード、南米の多島海、ホーン岬、コクバーン水道、バスケット島、スチュアート島、南極の海、氷山、完璧な静寂などなど、あってないような航路標識を自前の知恵と勇気で乗り越えていく姿が描かれています。航海の途中、すさまじい自然の景色を目の前に、人間を超える存在、偉大な命と畏怖を様々な角度から表現され、挫折しそうになった際は、「旅によって不屈の精神を養う」と志を立てた事を思い起こし、また若干23歳のスイスの若者から「本当に必要なのは、勇気と強固な意志だ。ヨットのサイズや嵐の強さは関係ない」と励まされたと力強く書かれています。
利府は、なんと素晴らしい先輩とご縁があるのでしょう。今、時代の嵐が吹き荒れそうな静けさがあります。7月にはトランプ前大統領を狙った暗殺未遂事件が起こるなど、世界情勢は不穏極まりありません。しかし、利府から出航した冒険家の片岡氏が見せてくれたのは、その不安を払拭し、いかなる社会課題とも対峙し、未来を切り開いていく事こそ、これからの時代に求められる大人の姿に他ならない、という人生の醍醐味ではないかと思うのです。
利府町長 熊谷 大(ゆたか)
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