■がん治療をスムーズに、がん克服後も健やかに!
宮城県立がんセンター 腫瘍循環器科 加藤 浩
腫瘍循環器科って?初めて聞くけど…という声が聞こえてきそうです。
日本は健康長寿社会を実現し、がんは身近な問題となっています。2人に1人はがんにかかると言われてますが、著しい医学の進歩により、がんサバイバーは増加し、今では10年生存率を議論する時代に変わってきました。
がん患者の生命予後が改善したことで、がんの治療中~完治後もがん自体および一部の治療薬が原因で心臓血管障害が発症することがわかってきました。心臓病併発のためにがん治療の中断を余儀なくされたり、がんは根治したものの心疾患で悩まれたりする方もおり、心機能を評価しつつ、がん治療がスムーズに受けられるよう両者に精通した腫瘍循環器学が発達してきました。最先端のアメリカでは2000年頃から、日本では2010年頃からその取り組みが始まった新しい学問です。
実際には心不全や高血圧症、虚血性心疾患、肺塞栓など様々な心血管障害を合併する可能性があり、腫瘍医と循環器医が協力し、がん治療をつつがなく受けられるよう経過観察、治療介入を行っています。
心不全では息切れ、むくみ、呼吸苦等の症状が出てきますが、心不全に限らずいつもと異なる症状、違和感を自覚したら早めにご相談ください。
日常の注意点としては、規則正しい生活、禁煙、減量、減塩などの生活習慣改善が大事です。また、高血圧症や糖尿病などの持病がある方は、コントロールが悪いとがん治療時の心不全合併率が高くなるので、かかりつけ医の先生と相談し、しっかりと治療を受けてください。
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