高校生と小学生の「食」の授業を通した交流学習が続いています。同じ高舘地区にある宮城県農業高校と高舘小学校がその舞台です。宮城農業高校は東日本大震災で校舎が被災し、平成30年に高舘地区に移転。その翌年から両校の交流が始まりました。
高校生たちは日々学んでいる農作物の栽培や加工の知識を小学生たちに伝えます。一方、小学生たちは普段食べている食品への理解を深めていきます。
交流学習が始まり6年。昨夏から今年1月まで行われた交流学習を取材しました。
◆夏の種まきから
昨年6月上旬、宮城県農業高校の実習用の畑に高舘小3年生と4年生、約20人の姿がありました。同高校・生活科1年生約40人とともに大豆(ミヤギシロメ)の種まきを行っていました。
子どもたちは、高校生から「20センチぐらいの間隔でまくといいよ」などと教わりながら、手で掘った穴の中に種を入れていきました。約1時間かけ、およそ10アールの畑に種をまきました。
高舘小学校4年生の男子児童は「とても暑い中での作業だった。こうやって大豆や枝豆ができることを知った」と感想を話していました。
そして昨年11月中旬には収穫。脱穀機を使って、さやから大豆の粒を取り出します。天候に恵まれ収穫は上々だったといい、100キロもの大豆が採れました。続く12月には選別も。一つひとつ大豆を確認し、黒ずんでいたり、変形していたりする豆を取り除きました。
◆小学校で豆腐作りに
「まず水に浸した大豆をお湯と一緒にミキサーにかけていきましょう」
「豆乳ににがりを入れるタイミングは難しい。高校生のお兄さん、お姉さんに教えてもらいながら行いましょう」
今年1月、今度は高舘小学校の調理室に高校生たちの姿がありました。自分たちで育てた大豆を使って豆腐を作ろうというのです。
豆乳を入れた鍋を火に掛け、焦げないように混ぜ続けます。そこににがりを入れれば豆腐の完成。
型枠に入れ水気を切ると、普段、子どもたちが目にしている豆腐ができました。醤油やポン酢につけて試食すると、「めちゃくちゃおいしい」「店で売っている豆腐と同じだ」。驚きの声と笑顔が調理室に広がりました。
4年生の男子児童は「豆乳を焦がさないようにかき混ぜるのが難しかった。高校生のお姉さんたちに教えてもらったのでうまくできた」と満足そう。別の男子児童も「いつも食べている豆腐の作り方が勉強になった。もっといろいろな食べ物について知りたい」と話しました。
◆交流学習の〝効用〟
大豆をテーマにした交流学習を計画した宮城県農業高校・生活科の小島宗工教諭は「理解していることをいろいろな世代の人たちに伝える力はとても重要。高舘小学校との交流の中からコミュニケーションの力や表現力を学び育てて欲しい」と交流学習の狙いを説明します。
同高校の女子生徒は「学校生活では関わることがない小学生たちと栽培から加工までを一緒に経験できたのは貴重な機会だった」と述べ、別の女子生徒も「自分が知っている知識を小学生にも分かるように説明するのが難しかった。言葉を選んだり、伝え方を工夫したりして何とか教えることができた。とても良い経験になった」と振り返りました。
互いの学校の距離が近いことから始まったというこの交流。高舘小学校の担当教諭は「児童数が少ない高舘小にとって、少しだけ年が離れた高校生と関われるのは貴重な学びの機会」と述べ、「小学校の中ではできない交流を今後も続けていきたい」と期待を込めます。
宮城県農業高校の小島教諭は「同じ地域にある学校同士が交流を深め、互いの学校の生徒と児童が学び合えるようになればいい」と話します。
今年度の交流学習は1月の豆腐作りで終了。来年度も6月から再び大豆をテーマにした交流学習を計画しているといいます。同じ地域の中にある学校同士の交流は今後も続きます。
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