■天目茶碗
新田遺跡の中世武士の屋敷跡から出土した天目(てんもく)茶碗は、抹茶を飲むための器です。黒色の釉(うわぐすり)をまとい、高台が低く小さく、多くは口縁部に近づくと一旦すぼまり、そこから外に反り返るという、特徴的な形をしています。
中国の宋の時代(十世紀末から十三世紀後半)、主に福建省の建窯(けんよう)で焼かれ、日本には禅宗の僧によってもたらされた輸入品でした。その後国内でも瀬戸や美濃で作られるようになります。
屋敷跡からは他にも茶の湯の道具である茶入れや茶筅(ちゃせん)、さらには当時入手困難で非常に高価であった茶臼も発見されており、屋敷の主の財力や権力の大きさを物語っています。茶碗は破損した後も漆で継ぎ、高台が摩耗していることから、貴重な舶来品を大切に、長期間使用していた様子もわかります。
こうした高級な資料の出土などから、屋敷は、鎌倉時代以降、陸奥国の民政を担った「陸奥国留守職(むつのくにるすしき)」を代々務めた留守氏の住まい兼政務の場と考えられており、中世の国府である「多賀国府」の一部を構成する館と推測されます。
*紹介した資料は、3月末まで埋蔵文化財調査センター展示室で見ることができます。
問合せ:埋蔵文化財調査センター
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