扉を開けると、能面が目に飛び込んできた。よく見渡すと、鮮やかな青色の陶器や、レザークラフトと呼ばれる革製品などの工芸品も並んでいる。
ここは、栗原市工芸展の会場。毎年多くの人たちが会場を訪れる人気の展示会となっている。
人々を引き付けるその魅力とは一体何なのか。今月は栗原市工芸展の魅力を紹介する。
■うまくなりたい その一心で作品と向き合う
毎年8月に開催する栗原市工芸展は、今年で27回目を数えます。能面や陶芸品をはじめ、レザークラフト、パンフラワー、仏像など、100点ほどの作品が会場に展示されます。
2年前から栗原市工芸展に出展している、レザークラフト作家の坂田さんに作品作りの様子を伺いました。
◆レザークラフト作家
坂田 一正(さかた かずまさ)さん(築館宮野下町)
◇作品作りに終わりなし
とにかく、うまくなりたいその一心でこれまで作品作りをしてきました。
例えば、街に出かけたとき、今はどんな形や色のレザークラフトが人気なのか、人が持っているかばんや小物をついつい目で追ってしまいます。また、革の小物などを販売するお店に入ったときには、商品の構造や作り方に見入ってしまい、購入後に自宅で分解して、作品作りの参考にすることも、しばしばです。それでも、一足飛びにうまくはなりません。そのため、一つ作って、一つ反省を繰り返す日々です。
その他、私が魅了される理由として、革製品自体の魅力もあげられます。使い続けることで革がなじみ、つやなど独特の風合いが出るところは、素晴らしい特徴です。さらに、メンテナンスをすれば、長期間使用できることも魅力の一つです。もし、大切にしまっている革製品があれば、ぜひ日々使用し、風合いの変化を楽しんでほしいです。
◇作り手から見た工芸展
普段は、どうしたらお客さんが喜ぶか、イメージを膨らませ作品作りをしています。そのため、私にとって工芸展の魅力は、何といっても直接来場者と交流できるところです。工芸展当日は、来場者から、製作方法を聞かれることもあり、逆に私がどのような製品があると良いか、尋ねることもあります。
このように来場する人と交流しながら、直接その反応を聞けるこの工芸展を、これからも大切にしていきたいです。そして、今年の工芸展に多くの人に来場いただき、ぜひ作り手たちの思いが込もった作品を間近で見てほしいです。
■作品作りの雰囲気まで伝わる工芸展
これまで10年以上にわたり、栗原市工芸展に足を運んできた栗原さん。
「この工芸展は、作品作りの雰囲気まで伝わる」と話します。
栗原市工芸展の魅力を伺いました。
◆栗原 徹(くりはら とおる)さん(若柳大袋)
◇作り手の息遣いを知り楽しむ
栗原市工芸展は、市内の物事から着想したと感じさせる作品もあり、まさに栗原らしい展示会だと思います。また、全国的にも有名な美術展に入選する作り手の作品もあり、本当に見どころが多く、栗原の香りがする作品ばかりです。私は、この点が他の展示会と明らかに違うと思っています。
さらには、展示されている作品は全て栗原市内の作り手によるもの。会場には、その作り手がいて、来場した人たちに交代で作品の案内をするなど、作り手と来場者の距離が近いことも、魅力の一つだと思います。例えば、県内や他県にある美術館を想像してみてください。普通は、作り手はその場にはいません。そのため、作品の解説を読んで、その作品のことを知るのが当たり前の光景です。しかし、この工芸展は違います。作り手に直接作品に関する質問をするなど、作品作りの様子や思いなどを聞くことができ、作品作りの雰囲気まで伝わるのが、本当に良いですね。
■扉の先に見えたもの
取材から見えてきた栗原市工芸展の姿。それは、栗原ならではのものであった。
栗原の物事から着想を得た「作品」。そして、使う人のことをイメージしながら、日々ひた向きに技術を磨く「作り手」たち。さらには、その作り手たちと直接交流し、作品作りの雰囲気までも楽しもうとする「ファン」ともいうべき存在。この三つが会場で織りなす空間は、まさに栗原の香りがする工芸展と言える。
今年も栗原市工芸展が8月に開催される。今回は昨年より1人多い10人の作り手の作品が並び、細かな模様を彫り込んだひょうたんランプなども新たに展示される。
扉を抜けたその先で、今年も作品と作り手が皆さんの来場を待っている。
◇第27回栗原市工芸展
日時:8月6日(火曜日)~11日(日曜日) 午前10時~午後5時
※最終日は午後4時まで
場所:栗原文化会館
内容:市内を拠点に活動する工芸作家10人の作品展示
入場料:無料
問合せ:栗原文化会館
【電話】23-1234
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