文字サイズ
自治体の皆さまへ

【特集】織りなす、いと、ひと。~世界に一つだけの「さをり織り」~(1)

1/29

宮城県栗原市 クリエイティブ・コモンズ

さまざまな色や太さの糸が、織機によって一枚の布に姿を変えていきます。異なる糸同士の持ち味は失わず、それでいて、どこか調和がとれているこの織物の名は「さをり織り」。その布は、どれも個性豊かで、同じものは一つとしてありません。
今月は、手織りの温もりあふれる「さをり織り」と、それを通じてつながる人たちの姿を紹介します。

■自分自身を糸で表現 みんな違ってみんないい、さをり織りの世界。
さをり織りは、大阪府堺市の主婦、城みさをさんが昭和44年に考案した手織りです。
手織りならではの温もりや、作り手の個性を大切にする城さんの思いから生まれた、さをり織りの特徴を紹介します。

◇差を織る=さをり織り
さをり織りは、一般的な織物と異なり、織り方や糸の種類、太さに制約がありません。最も重要なのは、作り手の個性や感性です。
それらをかけがえのない「差」として捉えて欲しいという城さんの思いから、さをり織りと名付けられました。

◇人が織るからこそ
糸が一本抜けている。柄の組み合わせがバラバラ。一般的な織物であれば失敗作ですが、さをり織りでは、それが良い作品とされています。
機械織りでは出せない独特の風合いや、それぞれの製品にしかない特徴を大切にしています。

◇自立や自己表現を後押し
自由度の高いさをり織りは、障害者福祉施設の生産活動にも取り入れられています。
手先のリハビリの他、作品制作・販売を通じた経済的自立、社会参加の促進、言葉による自己表現が苦手な人のサポートなど、幅広い効果がもたらされています。

若柳地区の障害福祉サービス事業所すぷりんぐでは、利用者の生産活動に、さをり織りを取り入れています。
所長の二階堂さんに、活動のきっかけや、さをり織りが果たす役割などを伺いました。

社会福祉法人 栗原秀峰会
障害福祉サービス事業所 すぷりんぐ
所長 二階堂 智恵(にかいどう ともえ)さん(金成小堤)

◆個性を生かした活動
さをり織りは、15年以上前から取り入れています。きっかけは、当事業所の前身に当たる作業所の職員が、東京の障害者福祉施設を視察した際、利用者が伸び伸びとさをり織りを織る姿を目にしたことでした。使う糸の色やデザインなど、全て自由。個性を尊重した制作を通じて、自らの役割を果たす喜びや楽しみを見つけ出してもらおうとする姿勢に共感し、取り入れることを決めました。
当事業所では、利用者の特性に合わせて生産活動を振り分けています。さをり織りやビーズ細工などの手工芸品づくり、パンや菓子の製造、併設する喫茶店での調理や接客があり、得意なことを生かしながら活動しています。
現在、さをり織りを担当するのは3人です。集中力が必要なため、長くても半日を限度に、それぞれ取り組みます。そうした中でも、作り手は効率よく織り進めていくので、作業が滞ることはほとんどなく、その丁寧な仕事ぶりに職員はいつも驚かされています。

◆地域社会と結び付くツール
利用者の自己実現を目的に始まったさをり織りは、利用者が地域社会と結び付くためのツールとしての役割も果たしています。完成した布は、そのままでも十分すてきな作品ですが、洋裁ボランティアの手でバッグやポーチなどの製品に加工してもらいます。日常使いを通じて、さをり織りの風合いや魅力を、より身近で感じて欲しいからです。
また、コロナ禍以前は、利用者自らイベント会場で販売員を務めたこともありました。お客さんから直接、作品の感想や励ましの言葉をもらう機会は貴重で、制作の原動力につながる良い経験になりました。
さをり織りは、作り手や使い手などさまざまな垣根を越えて、人と人の心を結んでくれます。これからもこうした活動を続けていきたいです。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU