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【特集】300年の伝統 登米能 継承する思い(3)

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宮城県登米市

■【五番目物/そして、未来へ】時代が移り変わっても伝統と共に「思い」を後世へ

◇地域の伝統芸能は残すべき宝物
佐々木 多門さん
喜多流能楽師 Tamon Sasaki

登米謡曲会の皆さんは、稽古に対する姿勢がとても熱心で、努力を惜しまずに稽古に打ち込んでいると感じています。
能は、さまざまな役割の人たちの総合力で作品をつくりあげるのですが、土台となるのが謡です。そのことを理解して稽古されているので、初めて登米の謡を聴いた時は、声の出し方や息の合わせ方などの技術が高くて驚いた記憶があります。仕舞や囃子の稽古にも力を入れていて、地域に伝わる能はほかにもありますが、その中でも熱量はトップクラスだと感じます。
「地域に能舞台がある」という環境にも恵まれていると思います。舞台の奥行きや響き、明るさ、人の心を和やかにする周囲の自然、観覧する見所(けんしょ)のデザインや配置など、とても素晴らしいものです。また、明治村の雰囲気も相まって、まち全体が演出に加わっているかのように感じさせます。そのような雰囲気の中で演じられる能は、間違いなく魅力的で印象に残る作品です。
伝統芸能は、演じる人や見る人だけではなく、関わる全ての人の心を豊かにしてくれます。そして、そこには先人たちの知恵も詰まっているので、学べることは少なくありません。
長い歴史の中で形成され、地域に根ざした伝統というものは、時代が移り変わったとしても、残していく価値がある宝物だと思います。これまで登米能を大切にしてきた思いと共に継承し、これからもずっと森舞台で演じ続けられていくことを願っています。

■思いを、つなぐ
悠久の時を超え、絶えず受け継がれてきたのは、先人たちの思いがあってこそ。
地域の伝統を愛し、全身全霊をかけて舞台で演じ、守る。
その伝統と思いを未来へ伝えたいと願う人たちがいる限り、伝統芸能の灯は今後も絶えることなく受け継がれていくのではないでしょうか。

◇そして、明るい未来へ
薪能の本番直前、「お客さんが喜んで、また見たいと思ってもらえたら最高だね」と話す登米謡曲会の皆さん。全ての演目が終わり、惜しみない拍手が送られると、それまで緊張に満ちていた表情は笑顔に変わり、達成感に包まれました。
多門さんが言うように、伝統芸能は世代を超えて人の心を豊かにしてくれます。そして、創造性や表現力が育まれるほか、人と人との新たな絆が生まれ、地域の活性化にもつながります。それは能に限ったことではなく、各地に伝わる神楽や太鼓、民謡、踊りなども同様です。米谷会長は言います。「私たちに人口減少を止めることなんかできない。でも、だからといって大切に受け継がれてきた伝統を絶やしていいということにはならない。伝統芸能は地域と世代をつなぐ鍵。地域を元気にするために、これからも守り続けて後世に残していきたい」と。
私たち一人一人が伝統芸能に改めて目を向けて考えること。そして、思いと共に未来へつないでいくこと。それが、先人たちも思い描いた明るい未来へと続く架け橋になるのかもしれません。

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