■嵯峨立甚句保存会
「♪唄いなされや声はりあげて唄は仕事のはずみもの」。東和町錦織地区に伝わる「嵯峨立甚句」は、農作業唄として500年前から地域の人々に親しまれてきたとされる。素朴な中にも哀調を帯びた歌詞と曲調に合わせて踊られる振り付けは1番から5番まで異なり、甚句を一層印象付ける。
地域住民により保存会が設立されたのは1971年。祭りや民俗芸能大会で踊りを披露するほか、地元の小学校で継承活動を続けてきた。運動会で毎年実演されてきた児童らの踊りだが、学校再編により、錦織小は来年統合される。「2008年に旧嵯峨立小が閉校し、錦織小へ甚句が引き継がれてから16年。新しい学校でも伝統芸能を受け継いでほしい」と保存会は望みを託す。
今年6月には、新潟県で開催された「第64回全国民踊講習会」の指導種目に選ばれ、4人の会員が、全国から集まった約400人の民踊愛好者や指導者に向けて実技指導を実施した。講習会は、全国の中で埋もれ行く民踊の継承と普及を目指して開催されており、指導に当たった岩渕美江子(みえこ)さん(東和町錦織5区)は「全国から選ばれた8演目の中でも特に難しいと評された踊りでしたが、受講者の皆さんに熱心に取り組んでいただき感動しました」と振り返る。保存会長の菅原健(けん)さん(東和町錦織6区)は「地元で長く愛される嵯峨立甚句を全国に発信できたことは大変名誉。これからも継承活動にまい進したい」と士気を高めた。
地域から響く唄と踊りは脈々と継がれている。
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