『災害と医療』
仙南病院 早坂 弘人
今年の幕開けは令和6年能登半島地震の発生で、心穏やかにとは言えないものとなりました。私たちは平成23年の東日本大震災や、令和元年東日本台風の被災者となりました。日本でも令和2年1月に最初の感染者が確認された新型コロナウイルス感染症は、ある意味災害と呼べるようなダメージを今も残し続けています。
災害が起きれば、誰もがそれまで続けていた通常の生活ができなくなります。それどころか自身の生命が脅かされる危険さえあります。その時、自分の命を守るのは自分自身であると自覚しておかなければなりません。病気にかかる、怪我(けが)をするということは、それまで続けていた通常の生活ができなくなるという点で、災害の発生に通じるところがあります。
私たちは病院で勤務していますが、災害時には入院患者さんをどのように守ろうかと考えます。東日本大震災の際には水道も電気も止まり、余震が続き火災発生時の消火もままならない状況のなか、病院の中で一台だけ反射式石油ストーブを使いお湯を沸かし、焼酎用の4リットルのペットボトルにお湯を入れて湯たんぽ代わりにして配り、患者さんの低体温症を防ぎました。他にもいろいろな工夫をして危機を乗り切ったのですが、外来ではいつもの内服薬が切れたと受診する患者さんが多くいました。
疾患の中には、インスリンや心臓の薬のように薬剤を中止すると生命に関わるものもあります。災害時に必要な薬剤が必ず入手できるとは限りませんから、普段からある程度の余裕を持って薬を処方してもらうことをお勧めします。南海トラフ地震や富士山噴火、首都直下地震など、日本全国の物流に多大な影響を及ぼすと予想されているこれらの災害にも備えましょう。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>