本市では、中心市街地の空き店舗解消などに加え、まちなかの賑(にぎ)わい創出のため、地域プロジェクトマネージャーの池田浩二さんがさまざまな取り組みを行っています。
今回は、高校生と連携した「紙漉(す)き文化再生プロジェクト」を紹介します。
■紙漉き文化再生へ
市内でも特に紙漉きが盛んだった姫城地区の下長飯町。戦後に紙の需要が高まり、同町では一時期30軒もの紙漉きを営む家が立ち並びました。その後、機械化が進み大量生産が可能となったことで、手漉き和紙の需要は激減。昭和35年頃には同町のほとんどの紙漉き業が廃業し、その営みは途絶えてしまいました。
少ない資源を循環させて効率的に活用していく循環型社会への移行が求められる昨今。かつて市内で盛んだった紙漉きを文化として再生させることは、廃棄物の再利用や新たな価値の創出につながる可能性もあります。そこで、池田さんと環境教育推進校に指定されている都城商業高校がタッグを組み、同校3年生11人をメンバーとする「紙漉き文化再生プロジェクト」が5月にスタートしました。
■紙漉きを学び、触れる
紙漉きに関する情報が少ない中、メンバーはまず和紙の歴史文献を調査。また、県内唯一の紙漉き職人である福田雅美さんの協力を得て、その技術を学んだり、和紙をテーマに都城工業高校生がデザイン監修し、福田さんも携わった「ホテルTERRASTA(テラスタ)」の部屋を見学したりと、紙漉きや和紙を知って触れることからスタートしました。
■フィールドワークやワークショップを実践
三股町の地域団体の協力の下、和紙の原料となる梶(かじ)が沖水川河川敷に自生しているのを初めて目にしました。また、焼酎の製造過程で出る廃棄物を和紙に生かすため柳田酒造を訪問。同酒造代表と意見交換を行ったメンバーからは「芋の色や香りが残った和紙を焼酎ラベルに使いたい」と提案も出ました。
紙漉きを広く知ってもらうため、メンバーと小・中学生で和紙のはがきを作るワークショップも開催しました。模様には、焼酎の廃棄物や花屋で廃棄される花、粉砕した廃棄ガラスなど、市内事業者から提供を受けた廃棄物を使用。実際に和紙を作るのはメンバー自身もこの時が初めてでした。プロジェクトのリーダーである藤岡佑成さんは「漉く時は少しでも傾けるとよれてしまうので、ずっと水平にしておくのが大変だった」と、手漉き和紙作りの難しさを体感しました。
また、宮崎大学の谷田貝孝教授を講師に招いた商品開発検討会では「ランプシェードが作りたい」とメンバーから新たなアイデアも生まれました。12月20日(金)には、メンバーのアイデアを生かしたイベント「和紙あかRe(り)ナイト」をMallmallまちなか広場で開催することが決定。瓶やろうそく、和紙のランプシェードに廃棄物などを再利用したランプの明かりが、まちなかを優しく照らし幻想的な世界を作ります。
■未来のまちのために
池田さんの思いと高校生の若い力が共鳴し、試行錯誤を重ねながらも着実に歩みを進める本プロジェクト。
リーダーの藤岡さんは「私たちが取り組んでいるのはまちの記憶を紡ぎ、未来につなぐ挑戦」と力強く語り、「いろいろな素材を活用し、途絶えた伝統産業を復活させたい」とメンバーの木村夏蓮さんも意気込みます。輝く瞳でまっすぐに未来を見据える彼らの挑戦は続きますー。
◆歴史や風土を見直すと見えてくる「まち」の魅力
「みんなが歩きたくなるまち」を目指し、さまざまなプロジェクトに取り組んでいます。重視しているのは「まちの記憶」です。どこのまちも同じような街並みが広がる中で、その土地の歴史や風土の中にこそ、まちの個性や住民の愛着につながるものが眠っていて、それがまちの価値や魅力に結び付くと考えています。
若い力で地域の文化の再生を目指す本取り組みが「まちの記憶」を継承し、地元の自然や産業との掛け合わせで都城の未来にどのような形で芽吹いていくのか楽しみです。
市地域プロジェクトマネージャー 池田浩二さん
◆まちの記憶は生徒の記憶にも残り未来につながる
環境教育を推進する本校の取り組みも生かせる本プロジェクト。池田さんをはじめ多くの人の協力により思いが少しずつ形になりつつあります。また、この活動の中で生徒たちが自ら提案したり、どうすれば伝わるかと考え、行動に移したりする姿を見て、彼らの成長を感じています。
今回知ったまちの魅力や出会った人は生徒1人1人の記憶に残り、消えることはないでしょう。卒業しそれぞれの道に進みますが、この記憶が生徒とまちを今後もつなげてくれると思います。
都城商業高校教諭 プロジェクト担当 北郷晶子(ほんごうあきこ)さん
問い合わせ:秘書広報課
【電話】23-3174
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