◆〜鞍川D遺跡出土丸木舟からわかること〜
氷見市立博物館の常設展示室へ入ると目の前に展示してあるのが、鞍川D遺跡で出土した平安時代末頃の丸木舟です。輪切りにして井戸の部材に転用された状態で見つかったため全体の形は不明ですが、本来はスギの大木を刳り貫いた全長10m近い大型の丸木舟だったと推測されます。
この丸木舟を観察すると、船体各部には、丸木舟製作に用いられたチョウナ(手斧)などの工具の刃痕や、井戸部材への転用時に切り込みを入れたノコギリの刃痕などの加工痕、櫓ろ櫂かいを結ぶための縄がこすれてできた磨耗痕、丸木舟の穴をふさいだ埋木や割れた部分を接合するために打ち込まれた鉄製カスガイなどの補修痕、フナクイムシの食害痕といった、造船や転用の際、あるいは丸木舟の使用中に生じた様々な痕跡をはっきりと見ることができます。
こうした痕跡は、丸木舟が建造された平安時代末頃から井戸部材に転用された鎌倉時代にかけての造船技術や操船技術、その当時の大工道具について知るための大きな手掛かりとなります。丸木舟としては断片的な資料ですが、我々にたくさんのことを教えてくれるのです。10月18日(金)から始まる氷見市立博物館特別展「氷見と樹の文化史」では、この丸木舟をはじめ、氷見で出土した木製品を展示しますので、ぜひご来館ください。
(博物館主査 廣瀬 直樹)
問合せ:博物館
【電話】74-8231
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