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続・ひみ未来遺産「第32回 大境洞窟と地震の痕跡」

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富山県氷見市

◆〜遺跡から知る過去の震災〜
今年1月1日の能登半島地震から早くも11か月が経ちました。氷見市では観測史上最大の震度5強を記録しましたが、これほどまでに大きな地震が氷見市を襲うとは、想像もしていなかったという方も多いのではないでしょうか。
一方、氷見市内の遺跡をあらためて見直してみると、過去にも大きな地震が発生していたことがわかります。例えば中谷内遺跡や惣領浦之前遺跡の発掘調査では、震度5以上の地震で生じるとされる地割れの痕跡が確認されています。それにより、縄文時代・9世紀以前・14世紀以前の3回にわたって氷見で大きな地震が発生したと考えられます。
もうひとつ、地震と関係が深い遺跡に、国指定史跡の大境洞窟住居跡があります。大境洞窟は、今から約7千年前の縄文海進期に波の力で造られた海食洞(かいしょくどう)です。洞窟の中には岩盤層で隔てられた6つの文化層が確認されており、縄文時代中期から中世まで6つの時代の遺物が出土しています。
この文化層の間に滞積する岩盤層こそが、かつての大地震によってひきおこされた落盤によるものではないかと考えられるのです。大正時代に実施された発掘調査の成果から、洞窟内では縄文時代の終わりごろ以降、4回にわたって落盤が発生したと推測されます。特に古墳時代初めの4世紀ごろに落盤した層は、岩盤が分厚く堆積しており、大きな地震災害が発生したことを想像させます。
また近年、大境洞窟周辺の地盤自体が、2mほど隆起したのではないかとも考えられるようになってきました。落盤が発生した地震に伴い、数度にわたって隆起したものと推測されます。今回の能登半島地震でも珠洲市や輪島市で海底の隆起が観測されたのは報道にあるとおりです。
大境洞窟では、平成14〜19年度に保全整備事業による落盤防止工事を実施していたこともあって、能登半島地震では新たな落盤は発生せずに済みました。遺跡から過去の地震被害を知り、将来的な災害へ備えることの大事さを教えてくれる一例といえるでしょう。
(博物館主査 廣瀬 直樹)

問合せ:博物館
【電話】74-8231

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