◆〜博物館とジェンダー〜
ジェンダーとは、生物学上の性別ではなく、文化的・社会的につくられる男女の性差のことです。ジェンダーの平等を目指すことは、SDGsの目標のひとつになっており、男女の役割や格差を見直す動きが広まっています。
博物館常設展示室内の民家広間には囲炉裏(いろり)があり、座る場所は座敷近くが主人座、外に近い所が客座、台所近くが主婦座、土間近くが下座と決まっています。よく見ると、男性が座る主人座と客座には茣蓙(ござ)、女性が座る主婦座と下座には莚(むしろ)が敷かれています。昔はこのような所にも、男女の格差があったことがわかります。
一方、大境洞窟ジオラマは、縄文時代中期(約四千年前)、母親が料理をし、子供が遊んでいるところに、父親が魚を持って漁から戻る場面で、「男性は仕事、女性は家庭」という設定です。しかし近年の研究では、小型獣の狩猟に女性が参加していたことがわかってきました。縄文時代のジェンダー観は、見直しが必要になっています。
さて、博物館所蔵資料の中に、海の男が着た一着の手編みセーター(スコッチ)があります。大正期から昭和初期、北海道からカムチャッカ方面へ出稼ぎに出た氷見の大敷網の漁師が着用したものですが、実はこれ、漁師が自分で編んだものです。編物は女性の文化と考えがちですが、昔の漁師は魚を獲るだけではなく、縄を編んで網に仕立てるのも重要な仕事でした。そのためこのような編物ができたのです。漁師が船の上で魚を待ちながら編んでいたセーターは、上記特別展に出品しますので、この機会に是非ご覧ください。
(博物館主任学芸員 大野 究)
問合せ:博物館
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